#25
「あ、輝夜君! やっぱり負けちゃったかー」
茉莉達が迷路から出てきたのは俺達が出てきた五分後のことだった。
「俺は足を引っ張ってただけなんだけどね」
「そうなの?」
「二人とも頭柔らかすぎ」
「なぞなぞ難しかったよねー。でもコッチは寧々音ちゃんが凄かったんだ」
あぁ、寧々音はああいう意地の悪い感じのなぞなぞとか結構得意だからなぁ。
とりあえず、休憩がてら近くの売店に入ることになり、俺は外のベンチに座った。
笑顔で近づいてきた茉莉は隣に座る。
「それで、進展はあった? 見た感じは二人とも入る時よりも溝は減ったように感じたけど」
「う、うーん。あったのはあったんだけど……」
「ん?」
「俺は何もしてないのに、勝手に和解したんだよね」
俺がやったことと言えばエロゲのキャラの可愛さへの力説と俺がロリコンでは無いという言い訳だけだ。ロリコンじゃないからな。
特に何もしていない。
しかし、迷路の後半はお互い喧嘩もなく、普通に話し合って出口へとさっさと辿り着いてしまったのだ。
「まぁ、結果オーライだね」
「……そういうことにしとくか。ところで茉莉はさ、俺のことロリコンだと思う?」
「うん」
「またまたーご冗談を」
手をヒラヒラさせて、笑い飛ばす。するとすかさずに茉莉が。
「くどアフは?」
「最高です! はっ!」
「最高だよねー」
「ハメやがったな」
だって最高じゃんかよー。そんなの即答するに決まってるじゃんかよー。
でも、アレはロリコンの代名詞みたいになってるからロリコン呼ばわりは逃れられない。
「まぁまぁ、偉い人は言いました。ロリコンは文化です」
「マジ?」
「ほら、源氏物語の主人公はロリコンでしょ?」
それ有名だけど、本当なのか?
「ロリコンで、熟女趣味で、マザコンで、ショタコンだよ」
「酷いな光源氏!」
「待って輝夜くん」
何かを思いついたような顔をして真面目な顔をする茉莉。
その顔があまりに真剣なせいで、息を飲んだ。
「エロゲーマーって特に好きなキャラはいるけど、そのゲームによって色んな属性の子を好きになるよね」
「まぁ……」
「輝夜君も別に幼女ばっかり好きになってないもんね! あ、朱里も好きって言ってくれたし……」
「あーうん。幼女ばっかりという表現に悪意を感じないでもないけど、俺は属性にこだわりはないかなぁ」
「ということは……エロゲーマーは現代の光源氏……?」
「……たまに思うけど。茉莉ってちょっと変だよね」
「ひ、酷いよぉ!」
エロゲーマーと光源氏を一緒にしたら各方面から怒られちゃうでしょ。
「もぅ。でも、これでミッションコンプリートかな? ここからは目一杯遊ぼうね!」
「そうだな。折角の遊園地だしな」
コツンと拳を合わせて、ミッションの終了を祝った。
弥白先輩は自分の意思で俺たちと一緒にいたいと言ったのだから、もうこれ以上、諍いが起こるとは思えない。
「かーぐーやぁぁ」
うわぁぁ、と半べそで売店から走って来たのは和華だった。
「おー、どうした和華」
「会長がグチグチと小言を言ってくるんだー! 親父みたいー」
美少女に親父みたいは酷いと思うぞ和華。和華の後ろからゾロゾロと残りのメンバーが帰ってくる。
「僕はちょっと昼食前にそんなにたくさんお菓子を買ったらお腹いっぱいになってしまうし、それに残ったら持ち運ぶのが大変だろうと諌めただけなんだけどね」
なるほど。見れば和華が手に持つビニール袋にはお菓子が大量に詰められている。
「これに関しては私も会長さんに同意です。山井先輩は買いすぎです」
おやっ? 姫ちゃんが弥白先輩の意見に賛同している。前までなら無言か、もしくは反発していたかもしれないのに。
やっぱり姫ちゃんも受け入れてくれている。それに無理している様子もない。
頼むからこのまま無事に今日を過ごさせてくれよと祈るばかりだ。
「けっ、どいつもこいつも寄ってたかってアタシを虐めるんだ。なぁ、輝夜。こいつらは放って二人でアレ乗りに行こうぜ」
ビシッと指差す方向には……うげぇ、ジェットコースター……。
「ちょっと山井先輩! それはいけません。とってもいけません。それなら輝兄さん。私ともです!」
「えぇー、なら私ともだよね輝夜君」
「み、みんなで遊べばいいんじゃないか?」
「逢坂君。しっかり選んでね?」
さらに姫ちゃんや茉莉までが誘ってきた。これは困ったぞ。
【選択肢】
A.茉莉
B.和華
C.姫ちゃん
D.弥白先輩
E.寧々音
F.誰とも遊ばない
久々に出やがったな謎の選択肢。これ、選んだらルート入っちゃうの?
まぁ、そんなわけないか。
ってか、選択肢Fがもうバッドエンドとしか思えない。
さて、それで俺が選ぶ選択肢は……。
「……じゃあ、ローテで」
はい、チキン。
選べるわけないだろ。人生はセーブ&ロード出来ないだぞ。
ということで、ローテーションで一人ずつ遊ぶことになった。
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