闇からの覚醒

ユウ

第1話


 また襲ってきた、そいつはふとした時にやってくる。

 張り付くように見つめ、僕をののしる。


 僕が一体何をしたのかわからないし、何が悪かったのかもわからない。

 だけどそいつはいつも僕をののしる。


 あの時、あのようにすればよかったのか、このようにすればよかったのかと、僕の頭の中で後悔のループが巡る。

 いつだってそうだった、頭の中はぐちゃぐちゃになり、今までの出来事や考えが走馬灯のようにめぐる。


 あの時あんなことしなければ、僕がもし生きていなければ。

 そう、僕なんてもうこの世に必要なんてない、死んでしまえばいいんだ。


 誰も僕のことなんか必要としてない、僕が外に出たところで何の役にも立たない。

 僕はずっとここにいたい。僕なんてもう死んだほうがいい。だけど……


 そして僕はあるとき実行に移す、縄を縛り、手ごろな場所を見つけるとそれをぶら下げる。


 その時の感覚と言ったら、もはやもう何も考えていない。部屋の空気もすっかり変わり、まるで現実ではないような感覚を覚える。


 そして、僕は首に縄をかけ、喉に当てる。もうこの嫌な世界とも離れることができる。そして、意識が遠のきかけた時だった。

 縄は無情にも引っ掛けた場所から外れ、ドサリと僕は床に落ちる。


 そして僕は思い出す、その時の闇を。あれはこの世のものとも思えない、本当に何もない闇。

 眠るのとはわけが違う。すべてを飲み込んでしまう、無音無色の闇。


 僕は床で、喉の痛みと、途方もない苦しみを味わい、その苦しみと、生きることへのつらさを天秤にかける。


 そして、僕は、僕の中に何かないかと探し始める。

 そして、僕は見つけた、僕の中のもう一人の僕。それは本当に弱々しく、触れれば壊れてしまいそうなくらい儚い。

 それは、ずっと僕の中心で、膝を抱えて泣いていた。僕のずっとずっと奥の方で。


 だから、僕は手を差し伸べた。僕には僕がどうして泣いているのか痛いほど分かっていたし、それを助けたいという気持ちだけはひとしおだった。

 だから、僕は手を差し伸べた。優しく話しかけ、僕の中の僕を慰め、僕に外に出てくるように言う。


「君はもう十分な苦しみを受けた

 もういいんだよ

 もうそんなに頑張らなくてもいいんだよ

 泣かないで」


 そして、僕は僕の中の扉を開けた。そのとたん、僕の中に光が広がるのを感じた。実際光なんてものはなかったのかもしれないけど、そう感じたのだ。


 僕をその光が満たすと、僕は一つになった。

 そして、不思議と僕の中から悩みがふっと消え、そして僕は僕になった。

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