第13話 何かと面倒な後輩

例によって、今週もまた真衣の勉強を見るために僕は図書室に居る。


「ねぇ先輩、何でそんな疲れた様な顔してるんですか?」


「何でだと思う?」


「分からないから聞いてるんですよ、質問に質問で返さないで下さい」


本当に分からないのか?だとしたら、呆れて何も言えない。


僕が疲れているのは真衣が昼や放課後に僕の所に必ずと言って良い程に来るからだ、その度に僕は真衣に付き合わなきゃいけないし、周りからもからかわれる、まえに真衣に覚悟がどうとか言われて以来毎日だ、正直もう疲れた、そろそろ勘弁して欲しい。


「そうだな、テストなら0点だ、僕が悪かった」


「分かれば良いんです、それで先輩はどうしてそんなに疲れた様な顔をしているんですか?」


「お前のせいだよ、毎日のように昼と放課後に僕の所に来ないでくれ、昼と放課後が近付く度に周りからからかわれるんだよ」


「それが原因でしたか、それならお断りします♪諦めて下さい♪」


まるで愉快だと言わんばかりの笑顔で真衣はそう答えた、そして僕の要求は断られ、諦めろとまで言われた。


「は?何故だ」


「だって言ったじゃないですか、直接思いを伝えにいくって」


「それがあれか」


「初めはそのつもりだったんですけどね...でも、予期せぬ事態に陥ってしまいまして、今は多分、違います...」


急に真衣の声が小さくなった、そして何か言いづらそうな感じの印象を受ける。


「予期せぬ事態?」


「はい...え〜と、何と言えば良いかな、一言で言うと...先輩に会いたくてしょうが無いんです!」


「え?」


「以前までは基本的に週に一度こうして勉強を教えてもらたっり、廊下で時々会うだけでしたが、先輩に毎日会いに行くようになってから、昼休みや放課後が凄く待ち遠しくなってしまって、多分...これまで我慢していた何かが吹っ切れてしまったんだと思います...」


何故こうなった...こんな事を言われた側は一体どんなふうに返答すれば良い?ただ、いい加減に勘弁して欲しいと思っていた僕としては、真衣のこの発言は予想外過ぎてどう反応すれば良いのかがまるで分からない。


「...」


「急にそんな事言われてもって顔してますね...でも、これが真実です、そして本当に先輩が迷惑していると言うのなら...やめます...」


...もし僕がこんなふうに言われてはっきり断れないと言う事を知って言っているのなら、なんて性格の悪い後輩なのだろう...


「はぁ...分かった、好きにしろ、ただし回数は減らせ、週二くらいにしろ」


「クスッ、やっぱり先輩は優しいですね、あまり他の女の子に優しくし過ぎると彼女さんに怒られちゃいますよ♪特に私みたいなのだと、フフッ♪」


自覚があるなら全てやめて欲しい、正直言ってそれが一番怖いのだから...まぁクラスは違うのだが、それだも僕の交友関係や休み時間の行動まで把握しているくらいだ、詩音に真衣との事がバレていない筈が無い。


ゆえに不可解な事がある、この事で詩音は僕に何も文

句を言わないのだ、一体どういう事だろうか...文句を言われてもおかしくない筈なのに...


まぁ良い、後で考えよう、今は真衣との事に収集を付けなければ、


「で、週ニにしてくれるのか?」


「まぁ仕方ないですね、少しくらいは我慢します、私の我儘を聞いてくれてありがとうございます」


「ああ、もういい」


また一週間の中に面倒事が増えてしまった...もうこれ以上は増えないで欲しいものだ、まぁそれでも今回増えた面倒事はそこまでの時間は要さないから多少は良いか、昼は潰れるが、放課後は少し話すくらいだ。


「ところで先輩、顔にゴミが付いてますよ」


「もっと早く言え、どこだ?」


「もぅそこじゃないですよ、私が取ってあげますから目を瞑って下さい」


「あ、ああ」


そして、僕は言われた通りに目を瞑り、真衣は席を立ち、僕の側まで寄って来た、ちなみに勉強は僕が真衣の対面に座って見ている。


「少しの間だけ、そのままじっとしていて下さいね」


「分かった」


「はぁ...ん」


「っ!」


僕の唇に何か柔らかいものが当たって来たため、思わず目を開けると真衣の顔がすぐ目の前にあり、そして柔らかい何かは真衣の唇だったと言う事を理解した。


急過ぎて状況が飲み込めない、は?どういう事?何故僕は真衣からキスされている?


「はぁ...ごちそうさまでした」


「な!」


「クスッ、どうしたんですか先輩?そんな驚いた様な顔をして、嬉しいでしょ?私のファーストキスですよ♪」


は?顔に付いたゴミを取る訳じゃなかったのか?どうして僕がキスされなきゃいけないんだよ!


「ふざけんな!ゴミを取るんじゃなかったのかよ!何でキスなんてするんだよ!」


「良いじゃないですか、減るもんでもありませんし、それにもしかして先輩も初めてですか?」


「っ!」


「クスッ、やったぁ!彼女さんよりも先に先輩の唇もらちゃった♪しかも先輩のヴァージンまで一緒に♪勇気を出して良かった♪」


駄目だ、僕が何を言おうと今の真衣には届く気がしない、何か凄い喜んでるし、それに何よりも真衣が僕に向ける視線は普段なら考えられない様なもので、熱っぽく、それでいて何処となく色気があり、今までに見た事がないくらいに満たされた表情をしている。


「はぁもう良い、確かに減るもんでもないしな、じゃあもう僕は帰るから」


「え〜もう帰っちゃうんですか~もう少しだけ良いじゃないですか」


「お前、本当に真衣か?もう少しってもう下校時間なんだよ、時計見ろ」


何かもう真衣が別人みたいに見えてくる...まるで酔ってるみたいだ、何が真衣をこうしたんだか...


「あっ本当に下校時間だ~じゃあせめて一緒に帰りましょうよ~」


「何言ってんだ、帰る方向が違うだろ」


何か今の真衣を一人で家に返すのが不安になってきた...しょうがないから送って行くか。


「え〜そうでしたっけ?」


「分かった、今日は家まで送って行ってやるから」


「本当に先輩は優しいな~だから先輩のこと大好きです♪」


「はぁ何言ってんだか...早く帰るぞ」


「あっ!待って下さいよ~先輩」


そして、僕は真衣を家まで送ってから自分家に帰った、花恋には具合の悪い友達を家に送ってかなきゃいけないから帰りは遅くなると伝えたため、特に問題は無かった。


だが、出来ればもう、あんな真衣に付き合いたくはない...まるで酔っ払いの相手をしているようだったため凄く疲れた、おまけにやたらと引っ付いてくるため暑苦しいし、周りからも何事かと言う様な視線を向けられた、振り返るととても散々な目にあっていたのだと分かった。


まさか真衣にキスされるなんて...本当に意味が分からない、まったく何なんだよ...

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