真実

 もう時間は夕方、俺は町のアメーバ駆除を警察にまかせて大学に来ていた、まだ道中にアメーバがいるかもしれないので全裸で。

 そして俺はTRPGサークルの部屋に向かいドアを開いた。

 早苗がいた。

「あ、健一……」

「早苗……無事だったか……ここか自宅だと思ったけど良かった会えて」


 早苗はサークルでTRPG中GMが座る時の椅子に座っていた、全裸で。


「私、待っててって紙に書いたよね? なんで出てくるの? 私健一を守ろうとして部屋から出られないようにしたのに!」


「いや俺も途中までそう思っていた」


「え?」


「早苗、どうしてしたんだ?」


「健一が何を言ってるのか私わからないよ」


「おかしいんだよ、お前が行動的と言ってもあの部屋の窓が釘で打ち付けられるのも、家具が外に移動しているのも俺が寝て起きるまでの間にできるわけがない、それもそのはずだ日付を確認してわかった俺は二日寝ていたからな」

 早苗は何も言わない。


「朝から出てきたアメーバなのに俺はなんで!」

 早苗は何も言わない。


「これは早苗、お前がアメーバの事を知らないとできない事なんだよ、つまりアメーバはお前が用意したものなんだろ! 大学の研究で何をしているのか俺は知らないがそういう研究じゃないのか調べればわかる事だぞ!!」

 

「あーあバレちゃったか、さすが健一だね」

 早苗は口を開いた。

 声は反省している色はない、むしろ嬉しそうでもあった。


「どうしてこんなことしたんだ?」

 俺は優しい声で言った。


「だって健一やりたがってでしょ?」

 俺は首を傾げた。


「ヒーローモノのTRPG」

 俺は絶句した。

 え? 俺がヒーローのTRPGをしたがってたから、こんなバイオテロを起こしたのか? 嘘だろ?


「なれたでしょ理想のヒーローにニュースで見てたよ、アメーバにお湯を掛けて回る健一の姿とってもカッコ良かったよ」

 うっとりとした顔で早苗は言った。あーこれはマジだ、マジの顔をしている。

 だからここで待っていたのか、だからGMの椅子に座っていたのか。

 俺の中で全てが繋がっていく。


「でもバレるなんて思わなかったなー、ちょっとヒントが多すぎたかも一方通行なシナリオだったかな、まだまだ経験が足りないみたい」

 早苗は椅子から立ち俺の目の前に来た。

 すっかり夜になってしまい月あかりで照らされる早苗の裸体は本当に美しかった。 誰にも見せたくない程に。

 早苗はいたずらっ子ぽい顔で、いや褒めてもらいたい子どものような顔で。

「どうだった?」

 と言った。


「最高だったよ!! すっげえ楽しかったありがとう早苗! お前は俺の最高の最愛の彼女だよ」

「やった、健一に喜んで貰えて私凄く嬉しい!!」


 俺と早苗は抱き合った。俺は今までで一番早苗を強く抱きしめた。


 もう俺は早苗と別れたいと思う事は無いだろう。

 をするのは俺だけでいい、早苗を誰にも渡すものか。

 そう俺は決意した、きっとこれが早苗に世界を壊させないようにする。

 たった一つの冴えたやり方だと思うから。

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