チャイムが鳴る。


 もう下校の時間になっていた。


「ごめん本田さん!」


 同時に悠太郎は本を閉じて花子に差し返す。


 それを花子は小さく手を振って受け取り拒否する。


「いえ、栞君そのまま持ってて下さい。それは今日のお薦めですから」


「だけどさ。俺、本に夢中で本田さんの邪魔してた」


「そんなとんでもないです。ここは図書室で、本を読む場所なんですから、そんな気にしないでください」


「そんなわけにはいかないよ。だって本田さん、まだ図書室に入れもしてないじゃないか」


「……あ」

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