設定女子!

佐倉 粕

第1話 「そして私は出会う」

「え〜なにそれ〜ウケるんだけど〜」

慣れないギャル語でギャル先輩の友達と話しながら私は繁華街を歩いていた。

「でしょでしょ〜まぢヤバくね?」

ヤバイって最近よく使うけど、正直な話、なにがヤバイのかよくわからなくなる。どれも全部、ヤバイものに感じてくる。

「でさでさ〜ウチの彼氏がさぁ〜」

困ったら彼氏の話題。本格的なギャル感がある。って言っても彼氏がいない私にとって、単なる苦行である。だから、目線を街に合わせる。夜になっても看板や店から漏れる明かりで目が眩みそうになる。柱にはさまざまな張り紙の跡、色の褪せたイモムシみたいな落書き。半開きのシャッターからも光が漏れる。中国語や英語なども人混みの中から聞こえてくる。本当に私はギャルになりたいのだろうか。そう思っていると、ギャル友のミサキが肩を叩いてきた。

「サヤ〜テンション低い系〜?」

「え〜?そんなことないって〜」

無理してテンションを上げてみる。最初のうちは楽しかったのに、今じゃめんどくさいと思うようになってしまった。

「今からどこ行く〜?」

ミサキの友達(たしかリコだったっけ)が言う。

「とりまスタバ行く〜」

ミサキが言った。ちょうど座りたかったし、付いて行こう。そう思いながら付いて行っていた。その時点では私はギャル友になりきれている、と思っていた。

「あんた、無理してるでしょ」

すれ違った少女にそう言われるまでは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る