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「まじか」
なにこの強風。今日に限ってなにこの強風。台風でも来てるの? ってくらい強いんですけど。セットした髪の毛全部無駄になったんですけど。この状況で本当に差出人の女の子待ってるの?
指定された場所は、そんなに広くはない商店街にあるベンチスペース。小さいけれど花壇もあって憩いの場所にもなっている。だいたい女子高生のたまり場になっていたりするけど、この時間ならまだ誰も居ない。ってことで一人で待ってる。とりあえず待っとく。寒いけど待ってる。ポケットの中に手突っ込んで待っとく。うん、もう十四時過ぎてる。
「なんでやねん」
つい零れた。なんでやねん。やっぱりイタズラなのかよ。ったくこんなおっさん捕まえてどこのどいつがイタズラしてんだっつーの。暇人かコノヤロー!
別に期待していた訳じゃないけど、なんか腹立つー!
「あの」
いやいや、別に俺、女子高生からラブレターきたとか思ってなかったし、多分イタズラだろうなぁって思ってたけど、もし万が一本当の本当に俺の事を想ってくれている子ならアレかなぁって思っただけだし。別に悔しくないし。ただ無駄な時間過ごしたことイラついているだけだし。
「あの」
「はい?」
不意に叩かれた肩に返した言葉にはトゲがあったが気にしていられない。
誰だ? 笑いに来たのか? あぁん?
「ミスティックスカイのマスターさんですよね?」
丸メガネを掛けた小柄な女性がそう訊いた。
「そうですけど?」
「あの、シオリさんが」
「シオリさん?」
彼女が指差した先に視線を送る。ガラス張りのカフェの店内からこちらに手を振る女性が。上品なその仕草、良く知っている。
「紫織さん」
彼女に連れられてそのカフェに入ると、紫織さんは意地悪な笑みを浮かべていた。
「マスター、ドキドキしたやろ?」
「紫織さんってば悪い人ですね」
「なんやの、今更知ったん?」
鈴が鳴るように笑うその女性は、元クラブのママで俺の店のお客さん。その隣には一人のダンディなおじ様が腰掛けている。
「マスター、なんかグラスで良いのないか探してたやろ? うちで昔お世話になってたバイヤーさん連れて来たで」
「えっ」
「だから堪忍な。可愛い子はさからいたいんよ」
ふふふ、と悪びれもなく微笑む紫織さん。でもまぁ、求めていた格好いいアンティークなグラスが手に入るなら・・・
「紫織さんには敵わないなぁ」
「私に勝つなんて百万年早いわぁ」
そりゃもう、一生敵わないな、紫織さんには。
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