ラブレターと逢い引き
カゲトモ
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ラブレターを貰うのは何年振りだろう、なんて。実は一度も貰ったことがないのに見栄を張ってみる。
手の中には薄ピンクの手紙。レースのように模様の入った繊細な手紙には綺麗な文字でこう綴られている。
“あなたに伝えたいことがあります。どうか私と逢ってください”
その後に続いているのは本日の十四時と言う時間と、場所のことだけ。差出人の名前はない。ただイニシャルで“S”とだけ書かれてある。
はてさて、どうしたものか。
「イタズラか? それとも本当に俺に恋する乙女か」
いやまて、乙女と断定するのはまだ早い。この街ではあまり性別は関係ない。
まぁ、好きになったのがたまたまその人だった、ってのが恋だろうし、性別は関係ないのだろうが、この封筒と便箋、それから文字を見るからに女性的ではある。だが、ミケが持っていたって不思議じゃないレターセットだし、妙齢の女性とも限らない訳で。
丁寧で綺麗なタッチの文字は年齢を特定できないし。うむ、どうしたものか。
「とりあえず、行ってみるしかないな」
ここで色々な事を想像していても何も始まらない。もしかしたら、本当に俺に恋心を燃やしているのかも、しれないし。
恋の始まりなんて、何がきっかけになるかなんて分からないし。例えば、駅でいつも見かける人、とか。駅ですれ違う人なんて年齢層が広い訳だし、若い子がいる可能性もある。
ありえそうなきっかけとしては、高確率で同じ車両に乗っているとか、目が何度も合うとか、持っていたカバンが同じでとか、好きな香水をつけていたとか。そんな何でもない事。
それでいつの間にはついつい、目で追ってしまっていて、俺の店を見つけたと。
いや、良く考えたらストー・・・いやいや、好きな人を視線で追うのはみんな経験済みだろうし。
まぁそんなこんなで俺に気持ちを伝えようと頑張って手紙を書いたのかもしれないし。
その勇気をコケにすることだけは、紳士としてしてはいけない事だろうと思うし。とりあえずは、
「時間まであと三十分か」
変な所がないか、鏡でチェックするわけで。
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