【800文字短編】ある森の姉妹

姫井珪素

ある森の姉妹

 姉さんと二人暮らしをしてから結構な時間が経ちますね。

 本日は晴天。洗濯日和。ここ最近週末は天気が崩れることが多かった。お布団を干すにはもってこいです。

 私の姉さんは、自慢の姉です。頭脳明晰で眉目秀麗で。時折見せる儚げな表情には、同性の私でさえ胸がざわめくことがあります。食べてしまいたいくらいです。

 ただ一点、欠点をあげると料理がまるで出来ないことです。一つくらい欠点がある方が可愛げがあるのだと姉さんは言います。実際可愛げがあるというものです。私の喜びは、姉さんに私の料理を食べて貰うことでした。

 お家に、料理の先生をお招きしてお勉強しました。姉さんも一緒に作りました。行程は全く一緒な筈なのに、出来上がった料理はまるで違っていて不思議に思いました。

 先生は、料理に大事なことをいくつか教えてくれました。

 食材も組み合わせ、鮮度、素材にあった調理方。私は関心して話を聞きました。

 ウェストハウス家の所有地の森で、お父様の知人と猟に出かけることもしました。姉の為なら猟銃を用いて、野鳥も打ち落とす覚悟でした。

 しかし、結果は散々。結局私は一羽も手にすることなく、何羽か野鳥を分けて貰いました。

 羽を取って血抜きをして、部位ごとにばらす。最初は怖かったけれど、なれればなんともない行程。素早くしないと鮮度が落ちてしまうので作業は迅速に。

 近所の市場で買ってきたものと違って肉の弾

力が全然違います。姉さんもこれには大喜びでした。

 美味しいものもっと美味しいもの世界で一番美味しいものは何だろうと考えました。正解はないのだと思います。何故なら、人には好みがあるのですから。

 好ましいことに姉さんと私の好みは似ていました。私の好きなものは、姉さんも好きでした。

 なので、私の一番好きなものを味わって貰おうと思いました。

 姉さん、少し痛いかもしれないですけど、我慢してくださいね。

 ええ、鮮度が大事ですから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【800文字短編】ある森の姉妹 姫井珪素 @Himei_Keiso

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る