第31話 おおきなひと

 わたしの家に巨人が来た。

 巨人はとても困っていたので、動けるようになるまでたすけてあげた。

 ほどなく巨人はすっかり元気になった。

 そしてこう言った。

「お礼になにかできることはないだろうか」

 わたしはちょっと考えて、こう言った。

「魔女を退治してほしい」

 わたしの村には、いろいろ困らせる魔女がいた。

 今まで何度も村人が退治に出かけたが、誰も生きて帰ってこなかった。魔女の城の前に流れるおおきな川に住む魚が、人を食べてしまうからだ。

 巨人は「それなら簡単だ」とさっそく出かけていった。


 巨人が川につくと、魚たちが暴れだした。

 銀の魚は頑丈な槍となって巨人を突き刺そうとした。

 金の魚は投網となって巨人の動きを封じようとした。

 黒の魚は剣となって巨人を切り裂こうとした。

 しかし巨人から見たらどれも小さかったため、つまようじのような槍は指で叩き落とされた。投網はクモの巣のように片手で振り払われた。剣は虫のように指先で弾かれた。

 こうして巨人はいとも簡単に魔女の城に攻め込むことができ、あっというまに魔女を倒すことができた。

 ただ、巨人は魔女の放つおそろしい魔法に攻撃され、ボロボロになって戻ってきた。そしてわたしの家の中で倒れてしまった。さようなら、と言って目を閉じた。

「ありがとう」

 二度と動かない巨人にお礼を言った。 

 でもどうしよう。

 わたしは残されたおおきな遺体に途方に暮れた。



 ここで目が覚めた。

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