第6話 釣り堀

 旦那と釣り堀デートに行った。私は釣り堀自体がはじめてで、ビル内の通路を歩きながら体育館みたいなところだなとぼんやり思っていた。屋内の釣り堀だから、そうなるんだろうか。

 入口手前ではすでに釣りを楽しんだおじさんたちが談笑している。なにが釣れるのか旦那に訪ねた。すると旦那は釣り人に声をかけ、ひとつのクーラーボックスの中身を出して見せてくれた。

 引き出された魚はフナとかアジとかイワシだと思ったけど、それは人形のような頭をつけた、ピンクのぷにっとしたボディの魚だった。まだ粋がいいらしく、ぴちぴちしている。まさかコレが釣れるなんて思わなかった。

「これって、あの、あれだよね」

 旦那は魚をクーラーボックスに戻しながら言った。

「ぽにょだよ」

「つ、つ、釣れるの!?」

「おお。あそこにいっぱい泳いでるぞー」

 釣堀を指しながら、釣り人おじさんは豪快に笑った。



 ここで目が覚めた。数日前に「ポニョ」の映画を見たばかりだった。

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