第50話 エピローグ②

 数日後の夜。

 俺はGHQの軍用ジープ、その後部座席で揺られていた。隣にはペニー少佐の姿が。


「ダークマター・レールガンの試射で、俺を元いた世界に戻す……だって!?」


 俺は驚愕した。

 それもそのはず、もうその口約束は反故にされたと早合点していたからだ。

「ジョーから聞いてなかったのか? 彼女は我々とこう約束した。『勝敗の結果がどうあれ、スタヂアムの接収は見逃してほしい。そして――』と」

「――――」

「あいにく我々は、契約社会で生きているんでな」

「はあ」

「フフフ、アレックス・バーンバスターのやつ、『ミスター・エージを監督としてスカウトしてみては?』と進言してきおったよ。セミプロにあそこまで言わしめるなど大したものだな。こちらに残って我が軍を率いてもらうのも一興だがな……」

「はあ………ちなみに、ダガーJは?」

「再来月からベトナムに異動だ」

 事も無げに少佐が言った。

「ジョゼフィーンの言う事件のことは私は知らない。単なる拳銃の紛失問題の責任を取ってもらっただけだ」

「はあ、そうっすか」

 俺は不審がられないよう努めて軽く応えた。その拳銃ならおそらく、百合ケ丘繊維工場の男子トイレ近くに今も転がっているはずだ。


 荷物をまとめてジープに乗れ、と半ば強引にGHQに連行されたのはこういうわけだったのか。俺は窓から見える新東都を見てひとりごちる。

(みんなにお別れも言えなかったけど――これでよかったかもしれないな)


 フライングジャガーズ戦、薄氷の勝利。百合ケ丘ナインと所長、俺の11人で全員でつかみとった栄光。スタヂアムはそれまでのように百合ケ丘繊維のホームグラウンドとして使用され、工場も所長の下通常運転だ。新繊維のGHQ受注も決定し、あの一戦以来公式戦向けの練習に工場勤務にとナインは大忙しのようだ。

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