第38話 vsジャガーズ【6回裏】ジョーカー②
「つるちゃんとかめちゃんがブレスレットを入れ替えてたのね」
「だからオーダー表みておかしいと思ったのよ。1番と2番が逆だもの」
「『敵を騙すにはまず味方から』ってな。ま、黙ってて悪かったよ」
口々に言うサンライズナインに俺は弁解する。
情報の流出で一番痛手だったのは、やはり中軸・二神姉妹を封じられることだ。このふたりは攻撃の要ながら、得意球がはっきりしすぎている。ならば、それを逆手にとる――そのカムフラージュとしての『ツインチャンス打線』だったというわけだ。
(しかし、ここまでに2点失うというのは想定外だったけどな)
俺は不安が悟られないように密かに息を吐く。
近代野球では事前に相手オーダー・先発投手から逆算し、予想スコアから継投策や代打策をとる。今日の想定では、渚が1失点完投での2-1での勝利だった。
(まあでも、継投も代打もあったもんじゃねえし)
サンライズのメンバーはきっかり9人。彼女たちを信じて送り出すしかない。
「みんな、泣いても笑ってもあと一回だ。次の攻撃、相手は1番バッターから。3番アレックスには確実に回る」
本日のアレックスは3打数2安打1本塁打1打点。スピットボールを封印してからの2打席はいずれもヒットを許している。泥だらけのユニフォームに身を包んだナインが俺をじっと見つめた。
「そして最終回、サンライズは4番のジョーからだ。スコアは同点、もう正面から点を取り合うしかない!」
「んなことわかってるよ!」と冥子。
「しばき倒しますわ!」麗麗華の勇ましい返事。
「頼んだよ、渚ー!」双子が左右から渚の肩をびしばし叩く。
七回表。百合ケ丘サンライズが、最後の守備に散らばった。
【六回裏終了】百合ケ丘サンライズ2-2フライングジャガーズ
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