謝尚1  袁宏との出会い 

簡文文壇 謝尚しゃしょう 全6編

 既出:簡文17、王導12、王導25

    王導40、桓温29、桓温34

    桓温40、桓温47、謝安62

    陶侃1、殷浩6、殷浩11

    殷浩14、殷浩17、王敦5

    謝鯤、蔡謨、袁喬1



オモシロ文人、袁宏えんこうさんの

デビューの話である。


袁宏さん、若い頃は貧乏だった。

なので取り立てられた租税を

船で運搬する仕事を請け負うなどし、

糊口をしのいでいた。


そこに、一艘の船が通りがかる。


乗っていたのは、謝尚。

陳郡ちんぐん謝氏のスーパーエリートだ。


風が爽やかで、月の雅やかな夜。


謝尚が甲板に出ると、

夜のその趣をより一層彩るような、

美しい吟詠の声が、

隣の商船から聞こえてくる。


その声は五言詩を詠んでいたが、

教養人である謝尚すら

知らないものであった。


ただし、これだけは言えた。

う つ く し い 。


そこで人をやって、

いったい誰がその美しい詩を

詠んでいたのかを問う。


そうしたら、袁宏は言うのだ。

自分で作った「詠史詩えいしし」、

つまり、歴史上の出来事に思いを馳せて

編んだ詩である、と。


マジか。なんつー文才だ。

謝尚、すぐに袁宏さんを自分の迎え、

やべぇな、お前おい!

と、べた褒めしたのだそーな。




袁虎少貧,嘗為人傭載運租。謝鎮西經船行,其夜清風朗月,聞江渚閒估客船上有詠詩聲,甚有情致。所誦五言,又其所未嘗聞,歎美不能已。即遣委曲訊問,乃是袁自詠其所作詠史詩。因此相要,大相賞得。


袁虎は少きに貧しく、嘗て人が為に傭われ、租を運載す。謝鎮西の經船し行けるに、其の夜は風清く月朗らかなれば、江渚が閒にて估客の船上にて詩を詠ぜるの聲有るを聞く。甚だ情致有り。五言を誦せる所、又た其は未だ嘗て聞かざる所なれば、歎美して已む能わず。即ち委曲を遣りて訊問せしむらば、乃ち是れ袁の自ら詠ぜるは其の作りし所の詠史詩なり。此に因りて相い要え、大いに相い賞得す。


(文學88)




えっ袁宏のくせにキレイ(ひどい)


謝尚

兗州八伯の一人、謝鯤しゃこんの息子にして、彼自身もめっちゃ風雅なひと。自由人なので突然踊りだしたりもする。やがて西の守りの要として赴任、任地で死亡。

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