衛玠3  阮脩とバトる  

阮脩げんしゅうという人がいる。

阮籍げんせき阮咸げんかんの親族である。

詳しい続柄はわからない。


かれの評判が鳴り響いていたため、

王衍おうえん、かれに問答を吹っ掛けた。


儒教じゅきょう老荘ろうそうとでは何が共通し、

 何が違ってくるのだろうか?」


すると阮脩は答えた。


「何か違いがあるのですか?」


この答えを王衍、大いに気に入り、

阮脩を部下に取り立てた。


阮脩のさくっとした応答は

評判となり、ちまたからは

三語掾さんごろく」と呼ばれ称賛された。


これをバカにしたのが、衛玠えいかいだ。

阮脩に言う。


「一語で感服させるべきだろう。

 三語もかかって、まあ」


阮脩、これに答える。


「何を言うのだ。真に人望があれば、

 そもそも言葉が要らぬ。

 一語たりとて費やす必要もあるまい」


言い合うと、二人はにやりと笑う。

以降、二人はマブダチとなった。




阮宣子有令聞,太尉王夷甫見而問曰:「老、莊與聖教同異?」對曰:「將無同?」太尉善其言,辟之為掾。世謂「三語掾」。衛玠嘲之曰:「一言可辟,何假於三?」宣子曰:「苟是天下人望,亦可無言而辟,復何假一?」遂相與為友。


阮宣子は令聞有り、太尉の王夷甫は見えて問うて曰く:「老、莊と聖教には同異あらんか?」と。對えて曰く:「將た同じき無かりや?」と。太尉は其の言を善しとし、之を辟し掾と為す。世に「三語掾」と謂う。衛玠は之を嘲りて曰く:「一言にて辟さるべし、何ぞ三にて假せんか?」と。宣子は曰く:「苟くも是れ天下が人望なれば、亦た言無くして辟されん、復た何ぞ一をも假さんか?」と。遂には相い與に友と為る。


(文學18)




阮脩

割と阮籍みたいな人。ただこの人はのちに王敦おうとんに仕え、永嘉えいかの乱に際して殺されている。晩節と言う意味ではどうしてもケチがついてしまっているため、阮籍阮咸に較べると名前が高まり切れない感じはある。

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