阮咸3  世俗#とは   

げん氏と言えば学者肌の一族だ。

そして当時、学者と言えば、儒者。


大きな道を挟み、北に住んでいる阮氏は

儒者として、みな立派ないでたちでいた。


しかし南に住む阮氏、

例えば阮籍げんせき、そして阮咸げんかんは、

粗末な家屋に住んでいた。


七月七日。

この日は衣類を虫干しする日である。


道北の阮氏の庭には、

きらびやかな衣類がはためいていた。


それを見た阮咸、

竿に大きなふんどしをはためかせる。


この道を通ったある人が、

この南北の取り合わせを不思議がり、

阮咸にその理由を尋ねた。


すると阮咸、答える。


「阮籍叔父上と違い、

 自分はまだまだ世俗から

 抜け出しきれていない。


 なので、こうして

 世俗の流儀に従うしかないのさ」




阮仲容、步兵居道南,諸阮居道北。北阮皆富,南阮貧。七月七日,北阮盛曬衣,皆紗羅錦綺。仲容以竿掛大布犢鼻(巾軍)於中庭。人或怪之,答曰:「未能免俗,聊復爾耳!」


阮仲容と步兵は道の南に居り、諸阮は道の北に居す。北の阮は皆な富み、南の阮は貧し。七月七日、北の阮は衣を曬せるを盛んとし、皆な紗羅錦綺なり。仲容は竿を以て大なる布の犢鼻(巾軍)を中庭に掛く。或る人之を怪しまば、答えて曰く:「未だ能く俗より免ぜざらば、聊か復た爾りたるのみ!」と。


(任誕10)




#世俗の概念

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る