王羲之3 王羲之褒めまくる

王羲之おうぎし、結構な褒め魔である。


謝万しゃまんについては

「山沢の中にありながら、

 常にその逞しさを増している」と。


支遁しとんについては

「率直な人柄、

 機転の利いた世知」と。


祖約そやくについては

「毛髪から骨格から、

 あれほどの方とは、

 この世では二度と会えまいな」と。


なお祖約については、息子の王徽之も

「世の中では祖約どのを

 朗らかな方と評している。

 我が一門も、かれについては

 非常に朗らかだ、と評している」

と、語っている。


劉惔りゅうたんについては

「気高くそびえておきながらも、

 決して出張ることはない人だ」と。


魏晋ぎしん期の名士、陳泰ちんたいについては

「ごつごつとした気骨の人だ」と。


親戚の王臨之おうりんしについては

「うちの臨坊は、

 突き抜けて清廉だな」と。



また会稽かいけいの東の東山で隠棲している

阮裕げんゆうについて人に問われたときは

「あのお方の卑近な誉辱に

 振り回されぬ様は、

 古来の隠者と較べても、

 まるで劣ってはいないな」

と答えている。

 



王右軍道謝萬石「在林澤中,為自遒上」。歎林公「器朗神俊」。道祖士少「風領毛骨,恐沒世不復見如此人」。道劉真長「標雲柯而不扶疏」。

王右軍は謝萬石を道えらく「林澤が中に在りて、自ら遒上なるを為す」と。林公を歎ずるらく「器は朗にして神は俊なり」と。祖士少を道えらく「風領毛骨、恐るらくは沒世にて復た此くの如き人に見えさらんことを」と。劉真長を道えらく「雲柯を標したるも疏なるを扶けず」と。

(賞譽88)


王子猷說:「世目士少為朗,我家亦以為徹朗。」

王子猷は說くらく:「世は士少を目し朗と為したり、我が家にても亦た以て徹朗と為す」と。

(賞譽132)


王右軍目陳玄伯:「壘塊有正骨。」

王右軍は陳玄伯を目するらく「壘塊として正骨有り」と。

(賞譽108)


王右軍道東陽「我家阿臨,章清太出」。

王右軍は東陽を道えらく「我が家の阿臨、章清なること太だ出づらん」と。

(賞譽120)


阮光祿在東山,蕭然無事,常內足於懷。有人以問王右軍,右軍曰:「此君近不驚寵辱,雖古之沈冥,何以過此?」

阮光祿の東山に在れるに、蕭然として事無く、常にて內にて懷けるに足る。有る人は以て王右軍に問うに、右軍は曰く:「此の君の近き寵辱に驚かざるは、古えの沈冥なると雖ど、何をか以て此れに過ぎんか」と。

(棲逸6)




ここで一まとめになってる謝万、支遁、祖約、劉惔は、正直経歴的な共通点が見出しづらい。なぜこの四人なんでしょうね。こう言う所を上手く掘り出せないのって、自分の読みの浅さを痛感してしまう。あと阮裕に対する「近不驚寵辱」はこれ、老子の「寵辱若驚,貴大患若身。」ですね。こわいこわい。


王臨之

もう一編にも登場してるのだが、そっちは登場人物の親戚ですよ、と名が上がるのみ。よって実質ここにのみ登場。父親の王彪之おうひょうしは東晋宮中でキャスティングボートを握ったこともある大物ではあるのだが、王羲之さんは彼のことを「できの悪い親戚」と言っている。トンビが鷹を産んだ、と言う感じなのかねえ。経歴的にはむしろ鷹がトンビを産んでる感じだけど。

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