庾翼2 諱ボクシング3
するとそこには
あの、こしゃまっくれたガキだ。
まだまだ幼い、
だがいかにも賢しげではある。
なので庾爰之、質問してみた。
「もし、
いずこかにいらっしゃいますかな?」
孫安国は、孫盛のあざな。
さて孫放、ピンときた。
見れば庾翼の息子だ。
いま孫盛は庾翼の家に訪問しており、
息子の彼がそのことを知らぬはずもない。
これは、何かを試されているな。
訪問客であれば、訪問先の相手は
官名で呼ぶべきだろう。
つまり、孫「
なのに、何故か微妙になれなれしい。
そこで孫放、こう返す。
「
これに庾爰之、大笑い。
分かっている、わかっているじゃないか。
微妙な馴れ馴れしさに対して、
自分も微妙な馴れ馴れしさで返す。
何ともまあ、こしゃまっくれたもんだ。
「これはこれは、孫氏はここからも
盛んでありましょうな!
このようなお子様がいらっしゃるとは!」
今度はもっとストレートに、
孫盛の諱を犯してくる庾爰之。
……こいつもまぁ、
だいぶいい性格してんな。
あーはいはいそういう奴ね、
なので孫放、庾爰之に返す。
「いえいえ、庾氏の翼々と
なさっておられるのには
敵いませんでしょう」
用事を済ませた庾爰之が返ると、
孫放、家人に言うのだった。
「俺の勝ちだ。
あいつが諱犯したの一回だけど、
俺は二回犯してやったからな」
庾園客詣孫監,值行,見齊莊在外,尚幼,而有神意。庾試之曰:「孫安國何在?」即答曰:「庾稚恭家。」庾大笑曰:「諸孫大盛,有兒如此!」又答曰:「未若諸庾之翼翼。」還,語人曰:「我故勝,得重喚奴父名。」
庾園客の孫監を詣でるに、行きたるに值う。齊莊の外に在すを見らば、尚お幼けれど、而して神意を有す。庾は之に試みて曰く:「孫安國は何こに在りしや?」と。即ち答えて曰く:「庾稚恭が家なり」と。庾は大いに笑いて曰く:「諸もろの孫は大いに盛んなり、兒の有りたるに此くの如し!」と。又た答えて曰く:「未だ諸庾の翼翼たるに若かず」と。還ぜるに、人に語りて曰く:「我、故より勝ちたるなり、重ねて奴が父の名を喚びたるを得る」と。
(排調33)
「よりたくさんバカって言ったほうが勝ち」。やり取りはこしゃまっくれてんのに発想そのものはガキンチョなの、嫌いじゃないですよ。
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