庾亮19 衛永さんのこと 

孫綽そんしゃく庾亮ゆりょうさまの府の幹部になった時、

共に白石山はくせきさんに出かけたことがあった。


このとき、衛永えいえいも一緒にいた。

明らかに景色を楽しんでいる風がない。

そこで孫綽、衛永について語る。


「このお方は山水には

 まるで興味を示されぬのに、

 著される文は非常に素晴らしいのです」


庾亮さま、それに同意して、言う。


「衛永殿の詩風は

 卿らにまでは及ばぬとは言えど、

 高き境地に届かんと

 しているようにも思えるな」


このコメントに、孫綽は感服した。



なお衛永とはこう言う人である。


祖約そやくには言われている。

「彼はまさに将帥として、

 はためく旄仗の旗の下に立つべき人だ」



また謝安しゃあんさまが、

孫騰そんとうと言う人に聞いている。


「あなたの家では、衛永殿について

 どのように語られているのだろうか」


「世知に長けた方と言っております」


謝安さまは答える。


「それは正しくないな。

 彼は哲理に長けた方なのだ」


なお孫騰の祖父は蕭輪しょうりんといい、

衛永の妹を妻に迎えている。

(蕭輪の娘が孫騰の父に嫁いだ)


また殷融いんゆうと言う人と、

よく引き比べられてもいる。



そんな衛永さん、

温嶠おんきょうさんにもえらく気に入られていた。

その副官に抜擢されると、

温嶠さん、たびたび酒肴を持って

衛永のところに出向いては、

日がな一日だべったりしている。


また衛永が

温嶠さんのところに出向く時も、

やはり同じような感じであったとか。




孫興公為庾公參軍,共游白石山。衛君長在坐,孫曰:「此子神情都不關山水,而能作文。」庾公曰:「衛風韻雖不及卿諸人,傾倒處亦不近。」孫遂沐浴此言。

孫興公は庾公が參軍と為り、共に白石山に游ぶ。衛君長の坐に在るに、孫は曰く:「此が子の神情は都べて山水に關わらず、而して能く文を作す」と。庾公は曰く:「衛が風韻は卿ら諸人に及ばざると雖も、傾倒せる處は亦た近からず」と。孫は遂にして此の言を沐浴す。

(賞譽107)


祖士少見衛君長云:「此人有旄仗下形。」

祖士少は衛君長を見て云えらく:「此の人は旄仗の下の形有り」と。

(容止22)


衛君長是蕭祖周婦兄,謝公問孫僧奴:「君家道衛君長云何?」孫曰:「云是世業人。」謝曰:「殊不爾,衛自是理義人。」于時以比殷洪遠。

衛君長は是れ蕭祖周が婦の兄たり。謝公は孫僧奴に問うらく:「君が家の衛君長を道えるに何をか云わんや?」と。孫は曰く:「云えらく、是が世の業の人たり」と。謝は曰く:「殊に爾らじ、衛は自ら是れ理義の人なり」と。時のひとは以て殷洪遠に比す。

(品藻69)


衛君長為溫公長史,溫公甚善之。每率爾提酒脯就衛,箕踞相對彌日。衛往溫許,亦爾。

衛君長は溫公が長史と為り、溫公は甚だ之を善くす。率爾として酒脯を提げて衛に就ける每、箕踞し相對せること彌日たり。衛の溫が許に往きたれば、亦た爾れり。

(任誕29)




衛永

何だこのいまいち正体が掴めないけど妙にいろんな人から褒められまくりの人……気持ち悪い……。衛氏ってことは多分衛玠に絡む人なんだろうなあ。上の人に気に入られまくる血筋なんだろうか。と言うよりアレか、美人なんだな、つまり。


蕭輪

この人なんで名前出てきてんの? ってくらい影が薄い。


孫騰

孫綽文人ブラザーズの一人、孫統の息子。紛らわしいがクソが!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る