王導30 劉惔、王導に会う


劉惔りゅうたんが、

初めて王導おうどうさまに会えた時のこと。


それは夏真っ盛り、

クッソ暑いときのことだった。


劉惔に会う時、王導さま、

腹を碁盤に押し当てていた。


「いやあ、この碁盤冷たくてね☆」


じゃねえよアホか。


げんなりして退出する劉惔、

「王導さまはいかがでしたか?」

と人に聞かれて、吐き捨てるように言う。


「特に、これと言って。

 あの楚訛りは耳障りで仕方なかったがな」



そんな劉惔、後日、

王濛おうもうの背中を撫でながらコメントしている。


「きみは本当に、

 どこぞの丞相どのに比べ、

 まったく雅やかで

 ゆったりとしているな」




劉真長始見王丞相。時盛暑之月、丞相以腹熨彈棊局曰:「何乃渹?」劉既出、人問:「見王公云何?」劉曰:「未見他異。唯聞作吳語耳。」

劉真長は始めて王丞相に見ゆ。時にして盛暑の月、丞相は腹を以て彈棊の局に熨して曰く「何ぞ乃ち渹なるか」と。劉の既に出づるに、人は問うらく「王公に見ゆるに云何?」と。劉は曰く「他に異なるは見えず。唯だ吳語の作せるを聞くのみ」と。

(排調13)


劉尹撫王長史背曰:「阿奴比丞相、但有都長。」

劉尹は王長史の背を撫して曰く「阿奴は丞相に比し、但だ都べて長なる有り」と。

(品藻43)




居眠りさせたりアホみたいな格好で会見させたり、世説新語、割と王導さま嫌いだよなあ。あるいは素の王導さま、割とそのだらしなさがガチで嫌われてたとか?


とりあえず、ここまで読んできて、劉義慶りゅうぎけいは劉惔や王濛に対する思い入れが相当強いのを感じたから、劉惔の好き嫌いは、劉義慶の好き嫌いにもリンクしていそうな感触はある。


まぁ一方でこのエピソードは「劉惔が呉楚の人間への迎合を善しとしなかった」ってことの表れともなっているのかもしれない。王導の協調路線が軟弱なものに映る、みたいな。そう考えると劉惔はやや融通に欠けるよなー。

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