王導14 梅の花を手折る 

琅邪ろうや王氏と陶侃とうかんの間には、

確かな溝がある。


能吏、劉弘りゅうこうのあとを引き継ぎ、

荊州けいしゅうの地を治めていた陶侃。

それを良しとしなかった王敦おうとん

従兄の王廙おうよくを陶侃の代わりに

荊州の長官に任命しようとした。

そして陶侃は、広州こうしゅうに左遷。


この話に真っ先に噛みついたのは、

陶侃の属領たちだった。

なんでそんな横暴な

人事されにゃあかんのだ、

と騒ぎ立てる。


怒った王敦、陶侃を殺そうとする。

しかし王敦の参軍であった梅陶ばいとうが、

これを必死で止める。

こうして陶侃、梅陶に助けられた。


さてそんな梅陶がとある事件に関連して、

王導さまに囚われることになった。


この事態に、陶侃が言う。


「幼イ帝ノ下デ、諸侯ガ

 好キ勝手シトンノダ。


 梅陶ドノノ罪トヤラモ

 王導おうどうノデッチ上ゲジャロウ。

 ナラ儂モ好き勝手スンド」


 そうして江口こうこうに人を遣り、梅陶を奪還!

 

 陶侃を前にした梅陶、

 感謝のため拝跪しようとした。

 だが陶侃、それを止める。


すると、梅陶は言う。


「この梅陶の膝、明日にもまた

 曲げさせたいのですか?」




梅頤嘗有惠於陶公、後為豫章太守。有事、王丞相遣收之。侃曰:「天子富於春秋、萬機自諸侯出。王公既得錄、陶公何為不可放?」乃遣人於江口奪之。頤見陶公拜。陶公止之。頤曰:「梅仲真厀、明日豈可復屈邪?」


梅頤は嘗て陶公に惠有り、後には豫章太守と為る。事の有りて王丞相は之を收めさしむ。侃は曰く「天子は春秋に富み、萬機は自ら諸侯より出ずる。王公の既にして錄を得るらば、陶公に何ぞ放つべからざる為らんや?」と。乃ち人をして江口にて之を奪う。頤は陶公に見え拜せんとす。陶公は之を止め、頤に曰く「梅仲真の厀は明日には豈に復た屈せるべからざらんや?」と。


(方正39)




梅頤ばいい

梅って苗字だから本当に人名かよって疑ったけど人名だった。ただ、注には陶侃を助けたのがこの人の弟、つまり梅陶だってことらしいので、ここでは注に寄せました。その方が王陶の懸隔がよりデカくなるからと言う作為的編集です。こうして歴史は捻じ曲げられるのだよ(ドヤ顔)。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る