簡文30 殷浩失脚    

殷浩いんこうは北伐失敗の責を問われ、

免職の憂き目にあった。


信安しんあんでの日々で、

殷浩はひたすら、何かを空中に書いてた。


信安県の属領たちは、

いったい殷浩が

何を書いているのかが気になり、

密かに筆跡を負った。


すると、殷浩が書いているのは

咄咄怪事とつとつかいじ」、

つまり「くそう、おかしいだろう」

だけであった。



また殷浩、簡文さまに向け、

恨みの言葉を残している。


「人を散々高く持ち上げておきながら、

 はしごを外して逃げようというのか!」




殷中軍被廢、在信安。終日恆書空作字。揚州吏民尋義逐之。竊視、唯作「咄咄怪事」四字而已。

殷中軍は廢さるを被り、信安に在り。終日、恆に空に書いて字を作る。揚州の吏民は義を尋ねて之を逐う。竊かに視るに、唯だ作すらく「咄咄怪事」の四字のみ。

(黜免3)


殷中軍廢後、恨簡文曰:「上人著百尺樓上、儋梯將去!」

殷中軍は廢されたる後、簡文を恨みて曰く「人を上ぐるに百尺の樓の上に著かしむるに、梯を儋いて將に去らんとせんか」と。

(黜免5)




別の伝に残る殷浩は、ちらりと悲しみを表にあらわしこそしたものの、平静であった、とも言われています。まぁ、キャラ付けの幅を頂けた、と思えばよいですね。

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