司馬師2 せめて異臭をば 

東晋とうしんが誇った英雄、桓温かんおん

度々の北伐で大きな戦功を挙げたが、

最後の北伐で、致命的大敗を喫する。


なんとか晋に帰還した桓温は病を得、

寿命が迫りつつあることに、焦る。

そこで、晋帝より禅譲を受けるための

工作を始めた。


だがその工作も、謝安しゃあんをはじめとした

晋の臣下によって阻まれた。


失意の桓温。

遂に、倒れる。


「あぁくそ、情けねえ。こんな有様、

 司馬師しばし司馬昭しばしょうに見られたら、

 ぜってーあいつら爆笑すんだろ」


それから、何とか上半身を起こす。


「英雄として名を残せねぇなら、

 せめて、かつてない大悪人として

 ふんぞり返りたかったんだが、な」


そう言って、

ちらりと息子の桓玄かんげんを見るのだった。


 


桓公臥語曰:「作此寂寂、將為文、景所笑!」既而屈起坐曰:「既不能流芳後世、亦不足復遺臭萬載邪?」


桓公は臥して語りて曰く:「此の寂寂と作りたるは、將に文、景に笑わる所と為るべきか!」と。既にして屈起し、坐して曰く:「既に芳しきを後世に流す能わざるに、亦た臭を萬載に復遺せるにも足らざらんか?」と。


(尤悔13)




桓玄

ご覧の通り原文にはいない。けど載せないとこの言葉の意味が取りづらくなるのだ。というのも、彼は簒奪を果たせなかった父の志を実現し、を建てたのである。ただし体制を盤石にしない中での強行であったため、半年もしないうちに劉裕りゅうゆうによるクーデターを喰らい、滅亡した。

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