さようなら はじめまして

鈴木 淳

第一部 覚醒

第1話 記憶1

 私には家庭があった。二人だけだが、結婚もしたのはつい最近の一年前だ。

まだまだ新婚というやつだ。未だに、嬉し恥ずかしいセリフを受けてときめいたり等は数えきれないほどある。

そして、新しく生まれてくるであろう命が宿っていた。


お医者様に見てもらって、一週間前に病院で確認したのだ。

私たちは余りの嬉しさにお互いを抱きしめあい、愛を囁いていた。

今思えば、人前でなんてことをしていたんだろうと思う。

かなり恥ずかしい話だ。


二人とも共働きなので、平日はどちらかが遅く帰ってくる時も多いのだが、そこは二人で協力して、家事を分担して生活していた。


休みの日は必ず、二人でどこかに出かけた。

近くの公園でピクニックをしたり、

水族館でイルカショーをみたり、

動物園でライオンに吠えられて怯えたり。


春には、

友達も呼んで盛大にお花見をしたこともあったなぁ。


夏は、

二人で海水浴に行って、日焼け止めをし忘れて体中がヒリヒリと痛んだりした。


秋は

車で山に行って、秋の紅葉を見に行ったり。


冬には

スキーをしに、車でドライブもしたっけ。


付き合い初めて2年。結婚してからまだ1年だ。

結婚を決めたセリフは今でも鮮明に覚えている。穴があったら入りたいほどのセリフだった。


今日の結婚記念日を覚えているだろうか。


いや、覚えているだろうな。


だから、プレゼントも用意しないと。


あの人はどんなプレゼントを用意してくれたのだろう。


本当に楽しみだ。

壁掛け時計の音がチクタクと小気味良く刻んでいく。私はこの音が好きだった。


突然、私の携帯から音が鳴った。もしかしたら、何かあったのかな?

携帯を握り、画面に表示される相手を見ると知らない番号だった。


はて、一体誰だろうか。少し嫌な予感がしながらも私はその電話に出るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る