鞍家小典之奇妙奇天烈事件帖~とどのつまり~

宮国 克行(みやくに かつゆき)

第1話 序章

「あのね!この魚には潮煮なんだよ!」

「あら。お言葉ですがお母様。絶対に刺身ですわ」

「馬鹿お言いでないよ!刺身なんて腹を下したらどうするのさ!勘三のお勤めに障りがあったら、私ら一家、路頭に迷うことになるんだよ!」

「勘三さんも刺身にかぎる、と先日申しておりましたよ」

「そんな馬鹿なこと言うかい!ねぇ、勘三?」

「勘三さん。先日、美味しく食べましたよね?」

 母親のまつと女房の菊、二人同時に睨みつけられて、勘三の箸はとまった。

 すでに、椀の中の飯は少なくなっている。添え物の大根の漬物もひときれになった。

「いや、あの……夕飯の魚料理はまだかい?」

 恐る恐る勘三は聞いた。

 「!」

 まつとお菊は同時に言った。

「今、その魚料理を決めようって言ってる最中でしょ!」

「……す、すまねぇ」

 あまりの迫力に勘三は仰け反った。

 その料理法を決めるのに、すでに半時(約一時間)以上もたっていることはとても言えなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る