ラスト・セレクタ
深海エレナ
第1話 突然の襲撃
「クールで俺様なところに惚れちゃう!」
その言葉は、私を過去の世界へと誘った。
あの頃の私はイケメンにドSな事をされたい!だなんて、アホな妄想していたっけ。
今では何が良いのか全く理解ができない。むしろ、いらいらする。
そんな奴はただの自分勝手な自己陶酔野郎だ。そんなことをしていいのは、hyde様だけだと決まっている。
声の主はどうやら女子高生のようだ。まだ何にも染められていない、純粋な女の子。
私にもそんな時代があったっけ…最近は、私のくすみ具合が夢にも顕著に表れていた。何故か私が世界を破壊する夢だ。どれだけ世の中に不満を持っているのだろうか。
呆然とそんなことを考えていると、気付けば女子高生たちはその場からいなくなっていた。登り階段で立ち止まっていた足を、再びゆっくりと動かす。ふと顔を上げると階段の上には一人の男性がこちらを見下ろしていた。いや、正確には私を見つめている…?
「…やっと見つけた」
聞き間違いだろうか、男はそう呟いた気がした。しかし私は何処かで会った記憶はない。聞き違いだろうと思い、私はその場をスルーしようと決めた。階段を登りきり、その男の横を通り過ぎようとした時、男は再び呟いた。
「お前は、24時間以内に絶対俺を好きになる」
「は?」
それは聞き間違いではなかった。思わず男の顔を見ると、にやりと笑った顔が私に向けられていた。その顔はとても整っていて、あながち嘘ではないかもしれないと思ってしまったことが、とても悔しい。否定の言葉を口にしようとした瞬間、彼はこう言った。
「言っとくけど、俺ホストじゃないから」
何故今私が言おうとしたことが分かったのだろうか。ホストは興味ないです、って言うつもりだった。たまたまだろうか?いや、これは想定できる範囲内だ。
新手のナンパだと決めつけ、私はそのまま立ち去ろうとした。その時後ろから気配を感じ、咄嗟に身体を反転させて後ろへ飛び、彼から距離をとった。
「え…?」
「へぇ…さすがの身のこなし」
何が起きたのか分からなかった。まずは、急にその男が私に切りかかってきたことだ。そしてもう一つは、私の素早い身のこなし。頭で考えるというより、身体が勝手に動いたという感じだった。だが、余裕の顔で私を見つめる男に、今は動揺した素振りを見せるわけにはいかない。
「切りつけてくるような男を、私が好きになるとでも?」
「ほんのご挨拶。本気で切りかかったわけじゃない」
そういってナイフをしまう様子を見て、いつの間にか身構えていた体の力を抜く。
この人は一体何がしたいのか。そして私の身のこなしは何だったのか。考えれば考えるほど、頭がおかしくなりそうだった。
「俺はリアン。とりあえず宜しく」
何が取りあえずなのか。私は納得いかなかったが、この理解出来ない状況をなんとかするにはこの男と関わらなくてはいけないような気もしていた。渋々目の前に差し出された手を握った。
「私はカンナ。よく分からないけど…宜しく」
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