第18話 変身
片田舎の商店街の一角にある美容室に行った。そこを経営している顔の知らない友達と雑談しつつ、今回の用事を済ませた。さて、帰るかな。自分の子どもは彼女の子どもたちと遊びながら待っているはずだ。遊び場に向かって声をかける。
「おーい、帰るよ」
そこに友達の子はいなく、うちの子は知らない子たち4人と、おもちゃを囲んでわいわい盛り上がっていた。なぜか子どもの背後にそれぞれの親が苦笑を浮かべて座っている。お世話になってますと会釈して、我が子の後ろに立った。
「帰るよ」
顔の知らない我が子は、突然の終了宣言に怒った。
「だめ! これやるの! お母さんそこ座って!」
「そうだよ! おばちゃん居ないとダメなの!」
「そーなのー」
周りの子たちの意見を聞き流しつつ、母親たちに目で聞いたら、それぞれから「居た方がいいみたいです」と目で言われた。しかたなく自分の子の背後に待機する。
それにしても遊んでいるおもちゃは随分カラフルだな。ああ、アニメでやってる変身少女の変身アイテムだ。子どもたちは誰がはじめに使うか相談中で、やっと話がまとまったようだった。
一人の子が立ち上がった。
「じゃああたしからね! よーし。ほにゃららほにゃららほにゃららら、青の色は、ブルーカラー!」
ぼんっ!!
「うわあっ」「きゃあ!?」
音と煙が上がったと思ったら、呪文を唱えた子の母親がそのキャラの衣装になった。いはゆるコスプレ。だけど首から上は変化がない。つまり普通の奥さんが着ているだけの状態になっている。こ、これは遠慮したい。
前触れもない強制コスプレに親たちは動揺する反面、子どもたちは大喜びだ。
次は誰かと思いきや、なんとうちの子が変身アイテムを持っているではないか。止める間もなく、呪文が始まった。
「ほにゃらら未知なる黄色はほにゃらららの色。イエローカラー!」
音と煙にまぶされ、正座状態でイエローの服に変化した。鏡がないので全身確認できないのがありがたいが、目線を落とすと下半身が見える。ひらひら超ミニスカートで同色系のブーツだ。うわあ。お腹が出ていない衣装だっただけマシかもしれない。だけど素で着させられるのは一体なんの罰ゲームなんだ?! 我が子は親の心を知らず無邪気に笑う。
「お母さん、似合うよ!!」
嘘つけ。
その後、順番でほかの母親も変身させられ40歳近いであろう大人4人は正座したままお互いに悲しい笑いを浮かべた。
ここで目が覚めた。
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