第2話

 翌朝、モガの使用端末に受信メールがあった。

 そこには敷居とジェイク、例のコメントをした人物の詳細データを保存しているフリーのネットデータ倉庫のアドレスとパスワードが記されていた。

 倉庫にアクセス。データを解凍し、まずはターゲットの内容を確認する。依頼した別のツテの相手も上手くやってくれた様だ。


 ターゲットの家庭は五人家族。両親に兄、姉、弟。兄は社会人で、現在は同居している様子だ。

 書き込みをしたのはこの内の兄。何処かで見た名前だ。例のニュースサイトには親の物と思われるPCからアクセスしている。

 兄に関しても詳細が載っていた。モガの中で記憶が鮮やかに蘇る。何と、過去にネットで実名で犯罪自慢をして炎上し、自宅まで突き止められた男だった。その記事はモガも見た事がある。

 某巨大掲示板の追跡スレッドでは、両親も賠償を請求された上に職を追われ、一家で別の県へ引越しをしなければならない事態に陥ったはずだ。引越し先についてもスレッドに書き込みはあったと記憶している。

 何処かのSNSで兄自身が恨み言を吐いていたのも、別のニュースサイトで取り上げられたのだった。家族はよくこんな男と同居する気分になったものだが、恐らく彼を追い出すツテも金もないのが現状なのだろう。

 相互理解のきっかけも見えぬまま、借金まみれで住まいや家族構成に至るまでの個人データがネット上に明かされた家族。魚拓と呼ばれる画像保存形式でのデータも見ようと思えば見れる所にあるはずだ。

 現在の家庭環境は推して知るべし。


 ひとまず、これで相手は知れた。敷居とジェイクの現在の家庭環境も。

 溜め込むタイプの敷居、そして昨夜母親が自殺したばかりのジェイクの心は何らかの突破口を求めていると思われる。自宅が分かった事で警察より先に敷居らを抑える事が少しだけ容易になった。




 そこで、今回のツテに連絡を取る。受けるかどうかは報酬次第。

 金額を聞く。自分でどうにかなりそうだが、隠し口座の預金が大幅に減る。

 まあ仕方がない。逆にその料金の範囲内で色々聞く事が出来る。一定の枠より外の関係者に他言しない事を約束すれば、割と融通が利くのはありがたい事だ。


 今回のツテの先は呪詛師であった。誰かを呪う稼業である。

 せせら笑う人がいるかもしれないが、成り立つからこそ商売として存在し、時として重宝され、時として忌避されるのだ。

 依頼された仕事を見て、自分でどうにか出来る範囲かどうかを、時として冷徹なまでに判断可能な人物。どんな仕事の場合でもこれは必要だ。

 そういう判断の出来ない者が、自分ばかりか同業者、家族や友人まで唐突に地獄に引きずり落とす。後は彼らが共食いするだけの、見たくもない結末である。迷惑極まる。


 敷居らがロックオンしつつあるターゲットに接触する前に、場合によっては最低限必要な誰かを葬り去る必要がある。なので知人から紹介されたその男に相談してみたという訳である。

 本名を知られたらアウトなのはそちらの業界でも同じな様子で、今回はモロキュウと名乗っているらしい。モロキュウは言った。

『方法は幾つかあります。

 今回あなたから頂く金額の中で一番安いのは寿命を縮める事ですかね。これでしたらお釣りをお返し出来ます』

「その方法の場合、あなたの同業の人からばれる可能性は?」

 モロキュウは唸った。

『うーん、口伝だったり体得するものといえど、厳格な形式に乗っ取った方法ですんで、ばれる時にはどう偽装してもばれるものですよ。

『あそこの派閥の奴か』

ですとか、

『あそこの土地の奴か』

ってね。私にもかつて師匠がいまして、妙な出来事を修行中に沢山見て来ましたが、一般の人から見れば気がふれているとしか思えない行為が、我々の行う方法ではどうしても必要だったりしますから、そちらを調べる事に特化した誰かの目には付くでしょう。

 その辺は私の未熟が成す所なのでサービスです』

「そういうものですか」

 自分がかつてしていた傭兵稼業での偽装工作と通じる所がある様子だ。

『同じ位の金額での方法としては……他には不幸が発生する頻度を上げるですとか、身体をボロボロにするですとかでしょうか。こちらは単なる統計ですが、女性のお客様が多く希望される方法として人気が高いです』

「分かる様な気がします。本とかで得た知識ですけれど、お手頃価格で済ませられそうな印象が強いかも」

 しかし、それでも八桁の金額になる。クライアントはよほど行き詰まった所で金をかき集めた層か、やんごとなきセレブ達の可能性もあった。

『基本的には頂いた金額でお客様の要望に近いものを行使するシステムですね。何せこちらも命がけですから』

「呪い返しっていうのとかですか?」

『ご明察です。他にもターゲットを呪いで死なせた場合に怨霊になってしまい、そちらから祟られたりというケースも稀ではありません』

 何かでそれは読んだ事があった。当然の流れだが嫌な話だ。

 クライアントに最初から高い金額を請求しておくのは一種の保険としてなのだろう。

「そういうのってあまり知られてないみたいですもんね」

『本当ですね。ああいうのを笑い飛ばせる世界の人達が羨ましいです。本人らの感覚としては行き詰まったら死んでしまえばいいだけですからね。

 こちらはそういう術式ですとかを行使中の状況下で自殺したらその後どうなるのかまで学んでいますので、とてもじゃありませんが安易にそういう行動は取れません」

「魂まで拘束されてしまう感じですか?」

『そんな感じですね。結局の所は、私の場合は何者かのお力を借りる為に供物を用意しているタイプです。

 使役と言うよりは

『協力してもらっている』

というのが正しいです。

 そんなあれこれで、死後は同業者にとっ捕まる可能性が高いのです。結果的に鉄砲玉の様な式神にされるか、切り札の式神にされるかも、死んでみてからでないと分かりません」

「お察しします」

『仕事柄、どうしても誰かから恨まれるものでして、自衛が大変ですよ。

『過激な行為を相手にもたらしたらまず大抵はしっぺ返しされるものだ』

というのが元から頭にないお客様にはなかなか苦労しています。まあ、どうにか解決してしまいますが』

「そこについては聞かない方が良さそうですね」

『賢明なお客様で助かります』

 呪詛師は穏やかに笑った。

「他の方法などはありますか?」

『最近安全性が上がった方法としましては、危険性が爆発的に高い心霊ゾーンとそのターゲットの家を霊の通り道として繋げてしまう事ですかね。

 確実にそのターゲットと周囲の人間性が問われますので、どんな目に遭うかは個人の人徳ですとか、その辺で大分変わります。そういう理由から結果はピンキリですが、一種の結界に閉じ込める形ですので、自宅に監禁する形になりますね」

「映画でも良くある、ドアが開かない状態になるんですか?」

『ええ。過去に見た実地検証の例では、途中から撮影したものだったのですが、どんどん家が腐っていくというのがありました』

「腐っていく?」

『ええ。家ってどちらかといえば単に入居者がいない空き家になるイメージが強いでしょう? 駄目になっても

『古いけど朽ち果てていない』

みたいな』

「ええ。北海道などの雪深い地域でなければ、引っ越す場合に潰したりという事もないでしょうし」

『ですよね。映像では家が茶色く発酵していく感じでした』

「発酵ですか」

『ええ。こちらでその方法を実地検証をしたいと思っていた時期に丁度依頼があったのです。で、実施した様子を撮影した、という』

「録った人も命がけ、ですよね?」

『ですね。

 事前にお清めみたいなものはしたので、そういう防衛的な意味では完全に手ぶらではありませんでしたが、同業としてちょっと人格に難のある人がいまして、その人に私を含む数名で依頼を持ちかけ、かなりなだめすかしておだて上げ、撮影してもらいました。

 安定しつつある術式とはいえ、我々のほとんどにとっても不可視の大規模実験の実施とその撮影ですから、

『上手く録れて生還出来ればめっけもの』

みたいな確率でしたが』

 何となく人間関係が知れた。

 ある程度のベテランだが人望が薄過ぎる人員。そういう面子をおだてて誰もやりたがらない仕事を丸投げするのは何処でもある処分方法だ。

『何処も人間関係については難しいものだな』

と思った。

『彼自身も素人ではないので、半分は経験から来る自信、もう半分はやけっぱちな気持ちだったのではないかと推測します。中には踏み込めなかった様子ですが、どうにか撮影に成功したのは、彼のおかげですよ』

 楽しげなモロキュウの声からも、その人物が如何に嫌われていたかが分かる。

『映像からは不特定多数の、その、絶叫ですか。それがずっと轟いていました。

 重いものの下敷きになった人の漏らす様な声も聞こえました。

 他には恐らく不意の通り道の出現に喜ばれた霊の方のものだと思うのですが、お子さんの楽しげな声なども悲鳴に重なって聞こえましたね。ちらつきも酷かったです。

 見ている途中で、逆さまに、多分男性の顔だと思うのですが、それが映っているのに気付きました。ずっとこちらを睨み付けていました』

「うわ……家はどうなったんですか?」

『二つの画像を重ねた感じに見えました。無事なままの家と、腐って土色の粘液の中に垂直に潰れた家の残骸が映っていました。

 一瞬ノイズが走り、その後には全体に水の染みが網の目になって走っている一軒家がありました。恐らく撮影前は普通の家だったのでしょうね。

 映像は最後に画面一杯に血染めの手の跡が、叩き付けられる様に付いた所で終わっていました』

「撮影者の方はご無事だったのですか?」

『いえ、その、どういう訳か他の同業者と調べても分からなかったのですが、そのまま彼は行方不明になってしまったんですよね。撮影したデータだけが丁寧に梱包され、こちらに帰って来ました』

「ふむ……つまり

『何かあったっぽいけど分からない』

と」

『そうなんです。ただ、別件で別の業界の誰かにデータを見られていない事だけは分かりました』

「そんな方法が?」

『どうにかね。

 料金の範囲内ですのでこれも少しだけお話しますと、別の知人が契約を交わしている式神がそのデータを守る為に付いていたのです。その式神は困った事に人の目玉が一番の好物でして、我々の筋以外の者が見ようとすれば、喜んでその両目に食い付くんですな。知人に聞けば

『奴がえらく喜んでる。たらふく頂戴したらしい』

という事で、妨害はあった様子ですが、それは全て例の撮影担当のご同業、いや、もう会えないと思いますので元ご同業かな。彼が全て被ってくれたみたいで、データを他の業界のものが見た形跡はなかったという確認も取れた訳なのです。

 結果、データはこちらに戻って来た、という訳で、効果をお話する事が出来るという事です』

「大変だったんですね……」

 酸鼻極まる話だったが、自分と親友が傭兵を辞めてからこの仕事に就くまでに辿って来た道も似た様なものだ。身の程に合わない報酬をくれる仕事には今後も警戒しなければなるまい。

『お話が長くなりましたが、これですといずれにしろターゲットは早くて当日、遅くても一週間以内には自宅で死にます』




 モガは少し考えた。今回敷居らに直接手を下させる訳には行かないというのが最優先事項だ。

 敷居とジェイクがターゲットをどうするつもりなのか知らないが、まず流血沙汰は避けられまい。しかも完全に通り魔的な犯行だ。そうでなくても計画性があればあるだけそれはまずい。

『動ける状態の一人の人間を殺す』

という行為は、場所にもよるし、手元に即死させられる得物がない限り、攻撃側が怖気付く様な反撃を食らうものだ。以前会った時の立ち居振る舞いからしても、躊躇せずに暴力を振るうタイプには見えなかった。

 会話で全てを見透かす事は難しいが、別の自分を演じている様子はなかった。素手でのケンカの経験も少ないだろう。つまり、相手に暴行を加える場合に最低限必要な、ためらわずに相手を物の様に扱える頭のネジのぶっ飛び具合も全く期待出来なかった。

 最悪、相手を殴っただけで罪の意識から吐くかも知れない。それだって物的証拠にされる。

 二人にとって相手の素性が分からない現状では、逆にターゲットから抹殺される可能性だって低くはない。

 どちらかと言えば肩幅があるが、基本的に細身の敷居。

 巨体で太めながら、その上に仕事で付いた筋肉があるジェイク。

 反撃された場合に死ににくいのは多分ジェイクだ。犯人を圧殺出来るであろう人物も確実にジェイク。

 初手で二人が検挙されないビジョンも見えて来なかった。


 別の場合を考えてみた。

 敷居らがターゲットだけをロックオンしているのかもまだ分からない点だ。

 家を突き止め、ターゲット、もしくは家族が同居していた場合は更に陰惨な結果になる事も想定しておいた方がいいだろう。手際だって素人だからこそ、逆に無残なものになる。

 敷居らがターゲットに接触後、仮に家に侵入したとして、相手が抵抗したり、警察へ通報しようとしたとする。

……駄目だった。日本の警察は逆探知して電話をして来るが、異変を察知して到着する頃には最悪の結末が待っている。

 誰かが死んでいるのは間違いない。他の誰かも重傷を負っているか、事切れる寸前だろう。

 それが敷居らでない確証もない。




 次に先ほどの会話からの印象も含めて、モロキュウの腕前をイメージしてみる。

 今回はモロキュウと名乗る彼とは外でしか会った事がないが、まだ若そうに見えるのに全身から不健康そうなオーラが見えた気がした。彼の仕事に加え、モガの過去の経験で見れば、長生きするタイプではない。

 国内外問わず、裏社会からの仕事も少なくないはずだ。失敗をすれば消される。

 話をしてみれば、そちらからの需要は引き受けていないとの事だった。仕事は自分のギルドみたいなものがあってそこから拾って来るとかで、モガが頼んで来る様な例は珍しいのだという。

 呪い返しをされたり、行使する方法の代償がでかく、用意していた供物では足りなかった場合の余波を自身で浴びる羽目になるのだという。

「まあ、

『まだどうにか生きている』

というのが実感ですね。知らない勢力からの呪いなどが来た場合にすぐ分かるのがありがたいかな。

 こればかりは実学でして、知識だけでは駄目です。

 漫画原作の映画で、悪魔に魂を売った少女が主人公のものがあったでしょう?』

「ああ」

 見た事があった。再現度が高く、良い作品だったと記憶している。

 おかげでDVDなどはプレミアが付いてえらく高いのだが。

『彼女が行く先々で惨劇が発生してましたが、それに嫉妬して自分なりに学んで自衛しようとしたいじめられっ子がいましたよね。彼の様になるのがオチです』

「なるほど、大変良く分かりました。あれはなぁ……」

 そう返事を返しつつ、モガは思考した。

 どちらにしろ、長生きするタイプではない。が、今回の抑止力としては期待出来る。


 敷居らと、そのターゲットである見ず知らずの他人。

 そこに関しては、どちらを選ぶかは考えるまでもなかった。




 今の自分を支えてくれている仲間の為に、何処かで暮らしている赤の他人であるターゲットにまとめて潰れてもらう。




「では、そのターゲットの家と危険極まる心霊スポットを霊の通り道で直結する方法でお願いします」

『お返事までに少し間がありましたが、そこは

『決断する為に必要な時間だった』

という解釈でよろしいですか?』

「ええ。

 私もこちらの世界のルールは知っています。他言無用ですよね」

『よろしい、お引き受けしましょう。これからお知らせする口座に現金でお振込み下さい』

 モロキュウが告げる番号に、モガは隠し口座から送金する。

 例の家族に関するデータの倉庫のアドレスとパスワードも通知した。

 息を呑む気配を感じた。しかし、その後に続いたモロキュウの声はそれを感じさせない。

『助かります。これがあるとないとでは的中率が段違いですので。

 後は後日、メールで報告しますので、それをお待ち下さい』

「ありがとうございます」

 これで契約が完了した。

 モガは深呼吸してみた。頭の芯に冷たいものが感じられた。

「やっちゃったなぁ……」




 モガが給仕を含む雑用を担当している彼女の雇用主、そして同僚らには自分の過去は様々なきっかけで明かしてあるが、個人名や連絡先は、ここに務めるより前からの親友である同僚しか知らない。そちらのツテを紹介して欲しがるのもその親友が一番頻度が高い。

 今の職場では雇用主を含む同僚らと

『お互いに面倒が起きたら直ちに相談するべし』

という協定を張っており、それがあったからこそ、今日まで自分達を生かしてくれていると言えた。

 今回の事は同僚らに直接関係はないが、過去にある一件で自分が立ち直れないほどに心身を病んだ時、雇用主がネットで個人のウェブサイトを開く方法を教えてくれた事があり、そこで、死を考えていた自分は思い留まる事が出来た。

『何もかも怖いから死にたい』

と思うまでに追い詰められていた自分を支えてくれたのは、雇用主と今の仲間と言ってもいい同僚達だ。

 だからこそ、自分で可能な範囲では自分でどうにかしたかった。

「ただ、みんな結構鋭いからなぁ……」

 傭兵生活で知り合った親友に、真っ先に見抜かれる可能性が高い。

 肩に手を置かれた気がした。頻度は落ちたが、脳内のもう一人の自分が話しかけて来る。

 喩えでも何でもなく、ある理由から脳内に同居させる羽目になった別の見方をしてくれるもう一人の自分である。

『やらかしたわね』

『まあね。顔も知らない他人だからこそ捨てられる場合もある』

『あっちの業界には詳しくないから結果を見るしかないけれど、さっきのモロキュウとかいう男にターゲットのデータを送信した後の様子が気になる』

『まあ、明らかに何かあるんでしょうけれど、あっちのターゲットに関してはもう私の関与する所じゃないわ。敷居さんとジェイクさんをどうするかでちょっと考えてるの』

 家を突き止められたというのはさすがにSNSでよく話している相手と言えど、警戒心を煽るだけだろう。訊ねて行くとしたら、関係の崩壊を覚悟しなければならない。

 その思考を読んだもう一人のモガが言う。

『ここからは私に任せておきなさいよ。あんたじゃまた変な所で突っ走って大怪我をする事になる』

 分かっている。自分でもそんな気がして、今、実に憂鬱なのだ。

『だから寝てなさいって。私が敷居とジェイクに接触して言い含めるから』

『でも』

『でもじゃない。もう二人とも相手の家に到着してるかもしれないのよ?』

 考えたくない事を指摘してくれる。

『二人の人脈が手に取る様に分かればなぁ……』

『とにかくあんたは少し休んでいなさい。みんなの目を盗んでまずはこの職場から出なきゃいけないんだから』

 モガはひとまず出かける為に立ち上がる。そこで意識が途切れた。

 入れ替わったのはもう一人のモガだった。主人格にして傭兵時代に入る前も後も過酷な経験をしていながら、同僚や親友への気配りを欠かす事が出来ず、擦り切れて行くタイプのモガのストレスが生んだ、修羅場用の人格と言えた。

 今回の件に関しては解決の糸口が見えない。まずは敷居とジェイクがいつものSNSにログインしているかを確認しなければ。




 同日の昼前。

 ヒソヤマ家を見渡せる公園の向こうに、何処かの会社名が横にペイントされた一台のボックス車が止まった。中から出て来たのは、一見電気工事担当風のベージュの作業服姿の男達。全部で五名。何処でも見かけそうな特徴のなさだった。

 作業道具が入ったボックスを片手に、ザックを肩に。そこを見ると派遣会社から寄越された下請けの作業員にも見える。

「じゃあ、始めるとしますか」




 モガにモロキュウと名乗った男は、途中で無事に合流した敷居とジェイクに、そう語りかけた。

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