第24話 本当なんでこんなに懐かれているんだろう
「わぁ……、私お祭りってひさしぶりです~」
「そうなんですか?」
「あのブラックに勤めてからは全然ですね」
「ああ……」
わかるよ、それ。
遊ぶのが怖いっていうかね。
「なので今日はイチゴ先輩といっぱい遊びます!」
「はいはい」
アミちゃんが私の腕にピタッと抱きつく。
本当なんでこんなに懐かれているんだろう。
そしてなぜか私もすんなりと受け入れている。
同じ状況だからなのかな。
その後、アミちゃんはものすごい勢いで屋台を回っていった。
今まで遊べなかった分、一気に取り戻そうとしているかのようだ。
たこ焼き、焼きそばなど、次々と胃袋におさめていく。
私はその間、焼きおにぎりだけ食べた。
街が西洋なのに、お祭りの様子はすごく日本っぽい。
それはやっぱり私たちが日本のお祭りしか知らないからかな。
まあ外国のお祭りがどんなのかも知らないけどね。
ベンチに座って、アミちゃんは今わたあめをもぐもぐしている。
かわいいなと思った。
まるでこどもみたい。
あれ、そういえばアミちゃんも昔の姿なのかな?
もともと大人には見えない外見だったけど。
う~ん、確かに幼さが増しているかも。
私がじっとアミちゃんを観察していると、その視線に気付いたのか赤くなっていく。
「あの、なんですか……」
「いえ、かわいいなって思いまして」
「むほっ!?」
「あはは」
恥ずかしくなったのか、アミちゃんは私から顔を逸した。
夢と希望の街か。
やっぱり初めにここに来てよかった。
ユーノさんのおかげだね。
それともこのアミちゃんとの出会いも調整していたのかな。
私たちの夢が繋がったことに意味があるんだろうか。
空に花火が打ち上がる。
「おぉ~! 花火だ~!」
「たまたまよく見える場所にいましたね」
私たちの座っているベンチからその花火はよく見えた。
過去に私の見たどれよりも近くで見ることができている。
花火ってこんなにもきれいだったのか。
思えば私はいつも桃ちゃんや雫さんのことばかりだった気がする。
それが私の幸せだったから。
でもここには私との思い出を持った2人はいない。
もしこの世界に留まるのなら。
私は自身の幸せを見つけていかないといけない。
変わっていかないといけない。
その時、私の手にアミちゃんの手が重なってきた。
不思議に思いアミちゃんを見ると、その視線は花火に釘付けになっている。
頬が少し朱色に染まっているように見えた。
でも花火の光ではっきりとはわからない。
ただその横顔はすごくきれいだと思った。
まるで女神様のように。
「きれいですね~」
急にアミちゃんがこちらを振りむく。
ぼ~っと見てたのでドキッとした。
「そうですね」
なんとか笑って誤魔化した。
ここは夢と希望の街。
アミちゃんとの出会い。
そして理由のわからないこの胸の温かさ。
きっと何か意味がある気がした。
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