恋の終わりはドレスで飾りましょう。
國灯闇一
祝福の朝
全ての準備は整った。私は彼の驚く姿を想像して笑う。私は長い間しまっていたドレスに身を包む。今日のために買った真っ赤なドレス。大切な記念日だもの。始まりから終わりまで美しくあってほしい。
シルクが肌に触れ、胸の中で鼓動する想いに浸り、自分のドレス姿をスタンドミラーで入念にチェックする。どこから見ても自分が綺麗に見えるようにと、彼の笑った顔を思い浮かべて磨きをかける。
ドレッサーに座り、研究に尽くしたメイクを再現していく。ゆっくりと丁寧に。
私はルージュを唇に滑らせた。口を閉じて、唇になじませる。最後にもう一度スタンドミラーの前に立ち、最終確認。スタンドミラーに映った私は笑っていた。もう大丈夫だと自信を持てた。
私は携帯と財布、メイク道具を入れた特注のバッグを手に取る。ドレスに合わせて作ってもらったスタイリッシュな黒のバッグ。少しお金がかかったけど、これも今日のため、そして、2人のため……。
私は靴箱から発色のいい靴を取って履き、部屋を出た。
私は予約でマンションの前に呼んでおいたタクシーに乗った。運転手さんは、「こんな朝早くからパーティーでもするの?」と不思議な様子で聞いてきた。私は「パーティーというより、式に近いですね」と返しておいた。それっきり、運転手さんは話してこなくなった。
私は窓から見える景色に目を移した。通勤の時間帯と重なって、流れるようにたくさんの車が道路を行き交っている。風に揺れる街路樹の緑が鮮やかに道を彩る。川の水面は揺れながらキラキラと光を魅せていた。
朝日が全てを輝かせている。こんなに心が晴れやかな日は、二度とこないかもしれない。私の決断に世界が祝福をしてくれているようだった。
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