第二章「子供だった俺ができること」

「お兄ちゃん。





    やっと起きたと思ったら今度は何!?



    もう置いていくよ!?




    私、遅刻は絶対したくないからねっ」






……………………



「どわぁっ」






 学校がある事を忘れていた。

 




いや、生きていることすら忘れていた。





「いいいいいいま なんんじ!?」






「じ……じ……」


「じ…?」





「自分で時計をみろおおおおおおっ」




 怒られた。


妹が怒るなんて珍しい。


どのくらい珍しいかというと一年に一二回あるかないかだ。




そんな妹を今、俺は怒らせている。







俺、よっぽどの事したのかな?






そんな疑問が浮かんだ俺は、パジャマから制服姿に急いで着替えている中、こんな文句をぽつりとこぼした。


「ごめん、ごめん。でももっと早くに起してくれたっていいんじゃないかな?」




 するとまたもや妹が激怒し、その声が部屋中……


ひょっとすると家中まで響き渡った。






「お兄ちゃん!!!私、一時間前からここでずっと起してたんだよ!?


 昼食に食べるお弁当もつくらずに、朝食の用意もせずにずっと‥‥。


 もちろん朝食なんか食べている暇なんてなかった。それなのに何!?


 もっと早くに起せだって。


 これ以上私に何を求めてるの。

 

 ふざけるのも大概にして。

 

 私はどんな気持ちで『お兄ちゃん、朝だよ?早く起きて。』って言ってたと思う?






 ちょっと聞いてる!?」



「でも、さ……。莉央ちゃんは俺が起きるまで待ってくれたんでしょ?いつもありがとな」




そういって、幼い女の子が怒っている様子みたくの妹をなだめるように俺は優しくそっと頭を撫でた。






その行為はいつしかの時を思い出す。



昔の俺は、妹一人安心させることすらできなかった。


唯一俺ができる事は、ただ「大丈夫」と言って頭を撫でてやる事だけだった。





情けない。




昔の俺は酷く情けなくて、自分に嫌気が指した。





だが今は妹を守ることだって簡単にできるだろう。





もう何があっても妹を何からでも守ってやれる。



そう胸を張って言える程俺は強くなったのだ。



「………お兄ちゃん……………」










「何だ?我が妹よ」





………………………………………

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