Draft-2 の 術 法
都市精霊の吹かせる風が、ドゥーリンモートの地下市街を渡っていく。
足を滑らせた人間が手にしていたジョッキ。その中身が波立ち、
『古来より、生物は弱肉強食。
子供に踏みつぶされる
『いるはずが無い。神は、思いのままでなければいけない』
チリ一つ動かないはずの世界に、さざ波のような笑い声が響く。
『ならば、世界は、
次第に世界は光に包まれ、白に消える。
◆
「【さて、皆様盛り上がっていらっしゃるようですが、
一礼すると、挑戦的な笑みで観客を見渡す映。
「皆様、本番はこれからです!」
ウィルマーは、芝居がかった動作で手を広げる。
「【この舞台に上がって】」「間近で
最早熱狂で破裂しそうな歓声だ。
おおおという地響きにも似た声。
「【それでは、】」
映の声が輝く。ビッと力強く、指で指していく。
「そこのドワーフの方、そう、
指名された四人が舞台に上がる。
「【
舞台に上がった観客を、
ウィルマーも、映の側にいるため、
「【
覗き込む四人の観客達。
「【おっと、中身には触れないで下さいね?」「神罰が下りますよ!」
笑顔で言うもんだから、映は恐ろしい。魚人がぴゃっと手を引っ込めた。
「【さて、では私がここから念を飛ばします】」「すると、樽の中の果実酒に、ある変化が訪れます────」
ごくりと息を飲む観客達。
「【3、2】」「1」
樽に向けて思いっきり腕を振る映。
すると──、どうだろう。
樽の中の
中心から放射状に、音を立てて凍っていく。離れた場所から、物を凍らせることが出来る────。これは、もう、間違いなく魔法だ。
ドワーフは思わずいじっていた
割れんばかりの拍手、とはこういうことなのだろう。ウィルマーは、深くお辞儀をした。
「【樽の中身は、食べられますので】」
「皆様方、どうぞお召し上がり下さい」
最高の笑みでそう翻訳する。額の汗を拭うと、胸が一杯になった。ウィルマーはいてもたってもいられず、映の肩を掴んでいた。
「【映、凄いじゃないか! 本当に魔法が使えたんだな!?】」
映はというと、スカートのすそを摘まんで各方向にお辞儀をして終わるところだった。
「【バカね……。そんなもの使えるわけないじゃない】」
憎まれ口もどこか嬉しそうだ。でも、魔法で無ければなんだというのだろうか? まあ、少し落ち着いたら聞けば良いか。
晴れやかな顔で、映は辺りを見渡している。いつまでも拍手は鳴り止まなかった。
祭司達も頷きながら、拍手をしている。
『そうそう……こうでなくてはね』
と、誰かが呟いた気がしたが、誰が呟いたのかはわからなかった。
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