殻園のレナトライゼ
麻華 吉乃
プロローグ
Draft-64856 いつか来る日
荒野に、鉄を引きずる音がする。夜と見まごう
――歩いていく。
荒々しい吐息が、少年の口から漏れた。しだれる赤い髪の奥から、剣先のようにするどい視線が、ひたと荒野の奥を見すえていた。
ふと、少年の脳内に女の声が響く。
『繰り返す終わりの調べは、ここで止めなければなりません』
子守歌が似合う優しげな声は、今、決断の連続から
『一度目は、あらかじめ
血がにじむ重たい身を引きずり、少年は、一歩一歩と進んでいく。
『しかし、再び起き上がったこの世界には、あらかじめ決められた運命などはないのです。終わるはずのない世界が、過去の
脳内に、様々な映像が流れ込んでくる。
旅の記憶、記録、仲間の笑顔。散っていった仲間の最後の表情。寸分たがわず、少年は思い出す。その時の感情、温度、肌で感じたすべてを。そうして、この場にふさわしい記憶を呼び
『少年よ、あなただけが頼りなのです。あの子を、救って下さい』
少年の身体に力がみなぎり、顔つきが変わる。
「ソラ様、言われるまでもありません。
ぎり、と引き結ばれた口。
「モウジキ炎ニ沈ム世界デ、オ前ハ、何ヲ望ム」
「……何もかもだ
そういって、少年は巨人に向かって
「ハ、運ヨク焼ケ逃レタダケノ、
くぐもった遠雷のような声がひびき、巨人はその溶岩でできたような巨腕を、
「
その言葉とともに、辺りでくすぶっていた残り火が、一斉に燃え上がる。その中から、ゆらりと立ち上がるものがあった。黒炭を固めて作られたような体。地につくほど長い腕。人間大のその異形の数は、十や二十を下らない。不気味にふるえ、ぐりんと、ねじきれそうな勢いで顔らしき部位を回すと、目の無い焼死体は己の敵に殺到した。
少年は、二刀を振るい、その黒い群に踏み込んでいく。
「ォオ―――――― 」
ごうと
「《
今、巨人への道は開かれた。
最後の火花が宙に消えていく。振りぬいた少年の手の中には、
――踏み込み、数メートルにも及ぶその刀身を、大上段から振り下ろす。
山が動いたかのような音が鳴った。
「楽シマセテクレヨ、レナトライゼ――」
激突する。
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