第5話 史料には存在しない「水夫射ち」、漫画や小説では頻出
さて、いきなり結論から申し上げます。
「源義経が、壇ノ浦で水夫を射た(射させた)」とする史料は、
「ありません(少なくとも今はまだ)」。
いやいや、あなたが知らないだけでどこかにあるんじゃないの? と思われるかもしれませんが、あるというのならその書物の名前を教えてください。これは、学校の先生に聞いても答が返ってきませんでした(ヤな生徒だな)。
「義経はそう(水夫を射殺)したと言われている」という説明文は、これまでに数えきれないくらいの本で見ました。しかし、どこでどのように「言われている」のか、根拠として史料を示した本は一冊もありません。
小説や漫画ならいいのです。つまるところ創作なわけですから、どんなエピソードを作り、どんな風説を採用しても、作者様の自由でしょう。
壇ノ浦決戦当時は、ヒラ戦闘員が乗っていたのは刳船(くりぶね。丸太をくりぬいて作った、丸木舟)と思われますが、全て板張り舟として描かれている漫画だってあるわけですが、特に問題ではありません。
そんなこと言いだしたら時代物なんて描けないし。
これは皮肉でもなんでもなく、本音です。いちいち突っ込む方が野暮です。漫画は教科書じゃないんですから。
実際、義経を扱った小説や漫画では、この「水夫射ち」が非常によく登場します。ある小説では「英雄というよりはアンチヒーローな義経像」を演出するために披露され、ある漫画では「非戦闘員を狙うことに葛藤するが、この戦には勝たなくては意味がないからと思い切って断行する義経」を掘り下げる形で採用されました。
印象的なエピソードですしね。
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