08/11


 …

 ……

 …………

 ……………ここは?


 ――先生、患者の意識が回復しました!

 ――やったか! 一時はどうなることかと思った!


 …

 ……

 …………誰だろう、なんだろう?


 まぶた越しにも、明るい光。

 白くて無機質な壁は、きっとここが病院だから。

 体につながれたケーブル。緑の画面で波を打つ心電図。

 白衣を着た人たちの、嬉しそうな声。


 なにが起きたのか分からない。

 だけど、たぶん。


「ゆ…め……?」


 意識が朦朧。

 ベットに寝かされて、ぼんやりと天井を眺めるあたしの前で。

 医師や看護師たちが、忙しく指示を出しあっている。


 みんながうれしそうで、みんなが笑顔。

 だけどあたしは、無表情に天井の照明を眺めている。


 分からない。あたしが誰か分からない。

 夢の感触が残っている唇を、舌でペロリと舐めてみる。


 幻覚みたいに、ぼんやりとした。

 ニトロの甘みが残っているような気がした。

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