紅色 ~傷~ 11
とても冷たい。
冷たくて冷たくて、とても冷たい。
極寒の中を服を全部脱ぎ捨てて、全裸でいるときの5倍は冷たい。
冷たいと言っても、それは物理的ではなく概念的な意味でのことだが。
いや、物理的な意味でもあるかもしれない。
とにかく冷たいのだ。
それは言動。
それは態度。
それは空気。
それは心。
僕は今ありとあらゆるモノが冷たく、寒波してしまいそうな程に冷たく感じている。
心身ともに冷たくなり始めていることに現実味がなく、本当の意味合いで現実で起こっている訳でもなく、彼女が──
絶対零度の中に手を何の
そのあまりにも馬鹿馬鹿しくて愚かしい事実に僕は目を瞑って頭を振って内心で言い訳を呟いてしまいたい、人として当たり前の衝動に手を伸ばたいのだが、僕にはとてもとてもできはなしない。
僕はしたくてしたくてたまらないのだが、時坂京はそんな逃げ道を用意してはくれなかった。
当然と言えば「当然だ」。
当たり前と言えば「当たり前だ」。
それは、瀕死で体から血が吹き出している相手だろうと時坂京は容易に簡単に容赦なく10トンのタイヤローラをプロ並みに扱って轢き殺す。
たとえ、相手が知り合いだろうと友達だろうと恋人だろうと、そして、親だろうと『
時坂京の取り扱い説明書の注意事項を読んだことは現状、あまり問題ではない。問題なのは、今までのことが全て僕にも当てはまるこということ。
現実非常な『
自分のルールを自分の流れを他人が幾ら努力しても幾ら一生懸命になっても、最後の奥の奥で決めるのは自分自身なのだから。
このことは今の僕にも当てはまる。
凍りついた水面はとても薄く透明に映るが、実際には案外厚いものなのだ。
僕と
道具なくしては割れない。
だが、道具は手元にない。
割れないことはつまり、僕と時坂京の間のとても冷たいこの壁は暫く、太陽といった第三者の介入なくしては溶けないことを表している。
──冷たい冷たい
そんな二人が同じ土俵に立とうとならば、どんな不可思議な反応を引き起こすのか。
僕は正確には把握できていない。
その仮説は“紅い彼女”──少女、
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