怒りの矛先

@mayumiu

第1話

「学習しろよ、馬鹿野郎」兄が怒鳴り込んできた。だから嫌なんだ。あいつといるのは。馬鹿野郎はてめぇだ。てめぇがうちに居座っててめぇがエアコンなんか回すから、同時のドライヤーでブレイカーが落ちんじゃねえか。てめぇは居候、私は家賃納めてんだ。早くいなくなれ無銭宿泊馬鹿野郎。


今日は1月5日。仕事始めの日。職場では「今年もよろしくね」なんて言ったり言われたりしながら、楽しく人と顔を交わしてきた。なのになんだ。最悪だ。あいつといると最悪だ。正月に帰ってきて、明日職場のそばの家に戻るという最後のタイミングで、なぜこんなに嫌な思いをしなくてはいけないのか。


「やってもらったらありがとうだろ」と説教垂れるこいつだが、自分では人にあれしろこれしろ指示ばかり。少し動くと厚かましく言葉を要求し、文句があればこれだ。中学の頃歯向かったら、顔を殴られた。その時妹は、「非暴力不服従だ。」と私を庇ってくれた。それに対して、こいつは「子供のただのけんか」と言った。正直、この男にこれほど楯突くのは私だけであり、両親は、特に父は、兄を恐れていると私は思っている。


外面がよく、喋りがよく、スポーツができ、顔がいい。勉強以外全てできた。仕事も口で手に入れ、外に敵はいない。いじめの対象者と決めたらさんざん笑ってこき下ろし、ネタとしておもちゃにする。こんな奴、だから嫌いだ。ずっとそうだった。やはり今もそうだ。変わらない。そう思って始まった今年だが、変えたい。決意している。これが今の私だ。私は何ができるのだろうか。どうなりたいのだろうか。

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