限られた世界

ユウ

第1話


 紘一はのぞき込んでいた。

 その限られた範囲から眺められる世界を。


 時には、人の姿が映り、窓の外を見れば、小さな家々がその小さな空間に区切られて、まるでミニチュアのようだった。

 紘一は、のぞき込んでは一日中でも眺めていた。


 紘一には、そこからしか世界を覗くことができない、あるいはそう思い込んでいたのかもしれない。


 その小さな世界を、時には雲を追い、時には小鳥を追い。

 いつまで眺めても飽きることはなかった。


 遠くの山々も、その区切られた世界では小さく、実際の雄大さとは裏腹に、かわいらしく見えるのだった。


 道路に目を向ければ、車のミニチュアが、走り抜け。

 歩く人が、ぽっけに手を突っ込み、足早に目的地に向かう。


 そして今日も紘一はのぞき込む


 望遠鏡には程遠いそれを。


 紘一はそれを口に放り込むと、それはほのかにちくわの味がした。

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限られた世界 ユウ @yuu_x001

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