一条さんのいるカフェテリア

minor

第1話 大通りにあるオシャレ街の中心

それは、オシャレな店がある大通りを通るとほぼ中央にある


カフェ

つりーはうす-Tree house-


ここには恋愛ごとの相談に乗ってくれる心優しい女が常駐していると噂されています。それを信じて見に行くもよし、バカにして見に行かないもよし。恋愛のことで困っている人が居るのなら試しに一回行ってみるのもいいでしょうね······。


ここにも困っている人が居るようですね······


ただ、あくまで噂だということをお忘れなきよう······





△▼△





「一条さーん、珈琲一杯で一日粘るのは無理あるって言ってるじゃん······」


「それを毎日言っている時点で無理ではないだろ。実際に珈琲一杯で毎日過ごせている。」


「それは僕が配慮してやってるからだろう。僕じゃなかったら君、追い出されてるからね?」


僕じゃなかったら、ということは君がいるところだったら取り敢えず良いということになるではないか。

この男はもう少し言うことを考えた方がいい。いつ損をしてもおかしくないだろう。


「はいはい」


興味なさげに聞こえるだろう。当たり前だ、興味無いからな。俺の返事を聞いたこのカフェの店主は、やれやれと言いながらまた作業に戻った。


自己紹介をしていなかったな。

俺はこの店に通っていて、さらにこの店の上のアパートに住んでいるただの男だ。名前は······ない、はずだ。訳あって18歳で仕事も大学生もやっているごく普通の男だ。


そしてあっちで開店準備をしている男はこの店の店長、鈴木裕士すずきゆうし。高校卒業の後、学生の時に貯めた金で開業をし、その後も結構な人気がありこうしてカフェを営んでいる。緩いようでいてかなりの努力家だ。



そしてさっきも説明したかと思うが、俺はここである仕事をしている。その仕事というのが、相談屋だ。そこまで多くは稼げないが、まあ生活費を賄えるだけの金は手に入る。学生のうちはこれで満足だ。


······と、そんな話をしている間に客が来たようだ。




△▼△




「で、今日は何の用だ。」


「············」


何も答えない。まさかとは思うが人を間違えたか?


「おい裕士、ほんとに俺の客なんだろうな」


「その筈だよ。うちで相談事って言ったら当てはまるのは君くらいしかいないからね」


それならどうして言わないのか······。謎だな。


目の前の女は20過ぎのOL、少し疲れているように見えるが普通にしていれば美人と言われる類いだろう。


「あ、あの······」


やっと女が喋った。


「一条さんという方は······」


「······俺ですが、なにか?」


「えっ······!?」


その反応には残念ながら慣れている。

どうしてか?それは例の噂にある。どうやら相談にのってくれるのは心優しい女で、相談に乗る内容は全て恋愛だという。しかも来たことのない奴らのせいで誇張され、都市伝説と化しているというデタラメまで流されている。これで客が来なくなったら商売上がったりだ。迷惑なヤツらめ。

そしてこの女もその噂に騙された口か。


「もし俺が女だから相談しようと思ったんなら帰っていいっすよ。別に俺そういうの気にしないんで。」


「いえ······少し驚いただけです。ここにいらっしゃる相談屋さんはとても優秀だとお聞きしたものですので、一条さんで間違いないのならお願いします。」


こう言われて頭まで下げられたらもう断れねえよな······。





「じゃあ、あなたの悩み······聞きましょうか」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る