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「斉藤君は、初恋いつなの?」

「えー、俺ですか? んー、多分、今になって思うんですけど、保育園の時に一緒の教室だった女の子だと思います」

「へぇ、可愛い」

「えっ可愛いですか? でも、本当あの子には悪いことをしたなぁって」

「悪いこと?」

 ふふ、と微笑んだ斉藤君はこくん、と音を立ててグラスを傾ける。

「ほら、よくあるじゃないですか。好きな子にはチョッカイ出したくなるってやつ。アレだったんですよねぇ」

「え、斉藤君が?」

「俺だって男の子ですからね」

 そう言う眼差しはとても優し気で。生真面目で働き者で、優しくて礼儀正しい斉藤君が。そんな普通の男子みたいな。いや、まぁ彼も普通の男の子、か。

「その子はいつも髪の毛を二つにくくっている子で。ピョンピョンって歩くたびに動いてて、なんでかいつも気になっていたんですよね。視界に入ると髪の毛を引っ張ったりして。追いかけたりとか、その子が使っているおもちゃを取っちゃったりとか」

 あー、何か分かる。そう言う子いたし、多分大体の男子は経験済みだ。こっちを振り向いて欲しくて、気づいて欲しくて、つい悪戯とかチョッカイ出したくなるんだよなぁ。

「今になってなんて俺は悪い奴なんだって思いますけど、あの頃は分からないんですよね。まぁ、案の定その子には嫌われてましたけど」

「早すぎたんだよね、恋するのが」

「ふふ、そうですね。今だったら他の方法でアピールするんですけど。その頃はそれしかやり方を知らないんですよね」

 男ってバカですから、と続けた言葉に同感。だからこそ成長するわけで。

「で、最近はどうなの?」

「え~?」

「大学に可愛い子いないの?」

「え~?」

 恥ずかしがるなよっ。最近はどんなアピールの仕方があるのさ? おじさんに恋バナ聞かせてよ。

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