2ページ

「斉藤君は、初恋いつなの?」

「えー、俺ですか? んー、多分、今になって思うんですけど、保育園の時に一緒の教室だった女の子だと思います」

「へぇ、可愛い」

「えっ可愛いですか? でも、本当あの子には悪いことをしたなぁって」

「悪いこと?」

 ふふ、と微笑んだ斉藤君はこくん、と音を立ててグラスを傾ける。

「ほら、よくあるじゃないですか。好きな子にはチョッカイ出したくなるってやつ。アレだったんですよねぇ」

「え、斉藤君が?」

「俺だって男の子ですからね」

 そう言う眼差しはとても優し気で。生真面目で働き者で、優しくて礼儀正しい斉藤君が。そんな普通の男子みたいな。いや、まぁ彼も普通の男の子、か。

「その子はいつも髪の毛を二つにくくっている子で。ピョンピョンって歩くたびに動いてて、なんでかいつも気になっていたんですよね。視界に入ると髪の毛を引っ張ったりして。追いかけたりとか、その子が使っているおもちゃを取っちゃったりとか」

 あー、何か分かる。そう言う子いたし、多分大体の男子は経験済みだ。こっちを振り向いて欲しくて、気づいて欲しくて、つい悪戯とかチョッカイ出したくなるんだよなぁ。

「今になってなんて俺は悪い奴なんだって思いますけど、あの頃は分からないんですよね。まぁ、案の定その子には嫌われてましたけど」

「早すぎたんだよね、恋するのが」

「ふふ、そうですね。今だったら他の方法でアピールするんですけど。その頃はそれしかやり方を知らないんですよね」

 男ってバカですから、と続けた言葉に同感。だからこそ成長するわけで。

「で、最近はどうなの?」

「え~?」

「大学に可愛い子いないの?」

「え~?」

 恥ずかしがるなよっ。最近はどんなアピールの仕方があるのさ? おじさんに恋バナ聞かせてよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る