プリメール・アモーレ
カゲトモ
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「改めて、今年もどうぞよろしく。乾杯」
「乾杯。こちらこそ、よろしくお願いします」
ワイングラスを持ち上げて斉藤君と乾杯。今年初出勤、と言うこともありお年玉ならぬ、お年ワイン? 斉藤君はワインが好きだから。
「美味しい」
「そう、良かった。春馬さんが美味しいって言ってたから買ってみたんだけど。正解だったね」
春馬さんはワインを卸してもらっているワイン専門の酒屋さんの店主で、ハーフらしい精悍な顔つきのイケメンさんだ。もちろん英語も日本語もバリバリ、っていうか長く関西に暮らしていたとかで関西弁使うからギャップが凄い。もう慣れたけど。
気さくでワイン通の春馬さんは安くて美味いワインを沢山教えてくれる。今日選んでくれたものも、飲みやすいのに余韻が残る、ブドウの旨味が強い美味しいワインだった。最高。
「今度俺も買ってみます」
「うん。ラベル写メって帰って」
「はいっ!」
目が輝いている。どんだけワインが好きなんだ。
昔の自分を思い出すなぁ、なんて。貪欲な方が良いに決まってる。少年よ、大志を抱け。なんてな。
「これ、プリメール・アモーレって、どんな意味なんでしょう?」
「プリメール・アモーレ?」
いかり肩のワインボトルに貼られたラベルに、赤い文字が綴られている。もちろん、読めない。裏を見ると、カタカナで“プリメール・アモーレ”と書かれてあった。産地はスペインだ。
「スペイン語ですかね? 検索してみましょう」
俺よりも速いスピードでスッスと検索する斉藤君の手元を見る。検索結果は“初恋”だった。
「初恋ですって」
「へぇ、思っていたより可愛い意味」
男二人で飲むには可愛すぎるかもしれないが、斉藤君はザルほど酒が強い訳ではないから、楽しくワインを二人で開けるにはこれくらい飲みやすい方がいい。
「初恋かぁ。マスターの初恋はいつですか?」
やっぱりこういう話題になるよな。
「初恋ねぇ。いつ、って言われると正確には分からないけど、多分幼稚園くらいから隣の教会にいたシスターにしてたと思う」
「わぁ、シスター! 格好いいですね」
「え、格好いい?」
「シスターってところも格好いいですけど、お姉さんに初恋したんですもんね」
年上に初恋したから格好いいのか? 今はもう年上限定とかじゃないぞっ。
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