第17話

 広場の後かたづけに追われていた大人たちは、ルーファス王子が別荘を抜け出した事に気付かなかった。

 慌てて全員で茂みの中を懸命に探したが、王子の姿はどこにもいない。

 残されていたのは王子の靴と杖。

 クーデター主犯の宰相にルーファス王子がさらわれるという最悪の事態になった。


「申し訳ございません、私が王子様から目を放したばかりに、こんな事になるなんて」

「いいえ侍女長に責はありません。ルーファスは貴女の言いつけを破って、自分勝手に外へ出たのです。

 私も同じ建物の中にいながら、王子が抜け出したことに全く気が付きませんでした。どうやらあの子は、自分の守護獣を置いていったようです」


 子供部屋の中を見回したエレーナ姫は、床に細い銀の鎖が落ちているのを見つけた。

 夜中に異界の獅子と向かい合った時、王子は手首から守護白蛇を外して、すっかりその事を忘れてしまったのだ。

 エレーナ姫は細い鎖を手に取ると、自らの魔力をそそぎ込む。

 ルーファス王子の小さな蛇は、水晶の鱗を持つ半透明の美しい蛇に変化する。


「さぁ、妖精族の眷属である白銀の蛇よ、我が息子ルーファスのいる場所まで案内しなさい」


 水晶の蛇はエレーナ姫の手からするりと離れ、床を這って部屋の外に出る。

 ルーファス王子の見えない足跡をたどるように玄関ホールまで進んだところで、急に動きをとめた。

 ちょうどその時、外でルーファス王子を探していたカナとアシュが夏別荘に戻ってきた。

 守護蛇はカナと玄関ホールで鉢合わせする。


「あーっ、家の中に蛇がいる!! こいつ、どこから入り込んだの」

 

 高位の守護獅子に立ち向かった守護蛇は震え上がる。

 この茶色い髪の魔女は、蛇を踏んづけて蹴飛ばし、頭をかち割ろうとしたのだ。

 蛇は魔女から必死で逃げて、ニール少年に助け出されるまで泥の中に潜んでいた。

 水晶の蛇はカナを見た途端、殺されかけた恐怖を思い出し、猛スピードで外に逃げ出した。


「この辺に住む蛇は毒を持っていて、噛まれると手足が腫れて大変なの。お客様へ危険を及ぼす害獣は、すべてワタシが処分する!!」

「カナさま、あれは毒蛇ではありません。ルーファス王子さまの守護聖霊です」


 天敵を見つけたカナに、アシュの制止の声は耳に届かない。

 カナは玄関に置いた工具箱入りリュックを背負うと、手にバールを持つ。

 子供の頃から妖精森の中を駆けずり回り、動物を追跡するのが得意だったカナは、足の速いアシュですら追いつけない猛スピードで逃げた蛇を追いかける。

 普段は乙女チックなレースの服を好んで着るカナだが、今日は大きめの鋲で靴紐をしっかり留めたスパイク付きの作業ブーツに、泥はね防止フード付きの黒いカッパを羽織っていた。


「あれは獲物を屠る狩人の眼。守護聖霊すら恐れをなして逃げ出すとは、魔女カナさまはとんでもないお方だ」


 右手に握りしめた赤いバールは呪杖に、風にあおられて広がるカッパは黒い羽根のように見える。

 今のカナは伝説の魔女そのものだ。

 必死に逃げる守護蛇とカナを追って、アシュは倒木とガラクタが散らばった遊歩道を駆けのぼる。

 そして気が付くと、いつの間にかツリーハウスのある山頂にたどりついた。


「裏山のゴルフ場から飛んできたフェンスが、ツリーハウスの周囲に散らかっている。あっ、蛇がフェンスの下に潜った」


 ツリーハウスのある山頂付近も、台風で飛ばされたゴルフ場のガラクタが散乱していた。

 巨木に絡まって地上に落ちたフェンスは、よじれて折れ曲がり巨大迷路状態になっている。


「この幾重にも張り巡らされた鉄柵(フェンス)は、罪人を捕らえる檻なのですね。私はこれほど巨大で、強固な檻を見たことはありません」


 アシュは魔女カナが宰相を捕えるため、この檻を出現させたと思った。

 鉄の棒を交差させて編み上げた鉄柵は網目が狭く、細い蛇しか通り抜けることができない。

 カナとアシュが突然現れた鉄柵の迷路に気を取られている間に、蛇はするりとフェンスをくぐり向こう側に逃げて、とぐろを巻き鎌首をもたげてカナを威嚇する。


「カナさま、あの蛇は私たちをルーファス王子の元へ導いています。見失ってはなりません、早く後を追わなくては!!」


 アシュはフェンスの金網に腕を突っ込んで蛇を捕えようとしたが、手首までしか入らない。

 急いでナイフを取り出し網目を広げようとするが、堅い金網はナイフの刃をボロボロにした。


「そうねアシュさん、ここまで追いつめたんだから、絶対に捕まえる。フェンスを十字に切ってバールで広げれば、中に入る穴ができるわ。金属片が飛んできたら危ないから、アシュさん後ろに下がって」


 カナはそういうと工具箱から電動ノコギリを取り出し、刃先を鉄鋼用ブレードに替えて防護マスクとゴーグルをした。

 伝送ノコギリのトリガーを引くと、鋭い刃先が動き出す。

 金網に触れた部分から一瞬火花が散り、金属同士が激しくこすれる鋭い音が響く。

 アシュのナイフをダメにした堅い金網を、魔女カナの魔導カラクリの牙はいとも簡単に噛みちぎった。



 高貴な守護聖霊は、黒衣のマントを身にまとい仮面をかぶった魔女が、金網をこじあけて追ってくるのを見た。

 魔女の持つ折れ曲がった赤鉄の杖(バール)は、膨大な魔力を宿している。

 あの杖に突かれたら、どんなに力を持つ聖獣や魔獣も一瞬で命を散らすだろう。

 守護蛇は鉄柵を潜り抜けよじ登り、迫る追手から逃げながら主の姿を探す。

 そして両耳をふさぎ踞(うずくま)る宰相の隣に、両手を縛られたルーファス王子を見つけた。

 

 ***


 妖精森に忍び込んだ宰相は、人が歩く道を避けながら茂みの中に隠れ潜む。全身泥だらけの宰相は、それが保護色となり森の木々にうまく紛れた。

 そして森の奥を目指して進んでいると、茂みの中で白い卵を夢中で拾う子供の姿を見つける。


「獲物が勝手に現れるとは、俺にも運が向いてきたな」


 ルーファス王子は間近まで迫る宰相に全く気が付かない。

 宰相は手にした杖を握りしめると気配を消して子供の背後に回り、そして振り下ろす。

 子供はゆっくりと地面に倒れた。

 獲物が意識を失ったことを確認すると、自分の証である宰相の杖と王子の靴を離れた場所に投げ捨てる。

 遠くでルーファス王子を探す声が聞こえる。

 宰相は沸き上がる笑声をこらえながら、王子を脇に抱えその場から遠ざかっていった。

 突然意識を失い、頭の鈍痛で目を覚ましたルーファス王子は、自分がぬかるんだ泥の上に倒れていることに気が付く。

 後ろに回された両手が動かない。


「気が付いたか。お久しぶりです、ルーファス王子さま」


 この聞き取りにくい、くぐもった声には聞き覚えがある。

 そして目の前には自分と同じように全身泥で汚れ、長いヒゲにも泥がこびりついた年老いた男がいた。


「宰相、おまえがどうしてここに居る!!」


 台風が通り過ぎて荒れた森の中を一別した宰相は、地面に転がる王子を見た。


「妖精森は楽園のように花が咲き乱れ、甘く瑞々しい果物が実る場所だと噂されていたが、話と全く違うぞ。地獄のような大魔女の住みかで、王子さまはどんな暮らしをしている?」


 賢い王子はその言葉で、宰相はまだ夏別荘に近づいていないと知る。

 そしてルーファス王子は、宰相の手に掛かるなら死を選ぶと言った母親のいる夏別荘に、絶対にこの男を近づけないと決心した。

 ツリーハウスに大魔女が住んでいると思わせて、そこに宰相をおびき寄せるのだ。

 

「僕は大魔女の奴隷にさせらて、山の頂上に立つ大魔女の家に住んでいる。仕事を言いつけられ、失敗すると魔法の杖で叩かれる」


 王子は嘘をつき、自転車練習で擦り傷だらけの自分の手足を宰相に見せた。

 宰相は王子の手足の傷に驚き、そして白いヒゲを撫でながら口角をつり上げて笑う。

 

「一国の王子様を奴隷扱いするとは、大魔女は情け容赦ないな。それなら俺が大魔女を倒せば、王子の奴隷契約は大魔女から俺に移動する。立てルーファス王子、俺を大魔女の住む場所に案内しろ」


 ルーファス王子の嘘にまんまと騙された宰相は、ぬかるんだ上り坂に足を取られながら、夏別荘と反対方向の妖精森の山頂に向かう。

 台風の影響をモロに受けた山頂付近は、草も木もなぎ倒され一本の巨木だけがそびえ立つ。 

 そして山頂に到着したルーファス王子は、その光景に驚く。

 ツリーハウスのある巨木の周囲に、迷路のように鉄柵(フェンス)が張り巡らされていた。

 

 ギューン、キリキリ、キィイーン

 突然背筋の凍るような、甲高く鋭い魔物の絶叫が聞こえた。

 宰相はこれまで聞いた事のない、全身が総毛立つような不気味な音に両耳をふさぎ踞(うずくま)る。

 しかしルーファス王子は顔を上げ、そして鉄柵の向こう側にいる人物の姿を見た。

 彼らの前に現れた【始祖の大魔女】は、黒いローブに顔をクチバシのような仮面で覆い、右腕に鋭利な刃物が生えている。

 魔女は蜘蛛の巣のような金網を、鋭く甲高い摩擦音を立てながら切り裂いていた。

 

「ひぃい、怖気の立つ気味の悪い音だ。あの化け物が始祖の大魔女か」


 鉄柵(フェンス)の向こう側で圧倒的な気を放つ黒衣の魔女に、宰相の目は釘付けになった。

 その時、一筋の細く小さな光が地面を這って守護城蛇がルーファス王子の元へ飛び込んでくる。


「あれは魔女の黒装束姿。お前がオヤカタをここまで連れて来てくれたのか」 


 オヤカタの後ろから離れた場所に、赤毛の女騎士も見える。

 これで大丈夫だ。

 オヤカタとアシュが一緒なら、きっと宰相を捕らえてくれる。

 カナとの逃走劇で力を使い果たした守護蛇は、細い銀の鎖に戻る。

 王子は宰相に気づかれないように銀の鎖を拾い、そして自分の両手を縛る縄を解くように命じた。



 甲高い金属の磨耗する耳障りな音が止んだ。

 カナは電動ノコギリをオフにすると、ゴーグルを外し鉄柵の向こう側を見る。

 そこには痩せた老人と、白銀の髪の子供の姿があった。


「カナさま、ルーファス王子を見つけました。そしてあの老人は、やはり王子はヤツに捕われたのか!!」

「王子ったらこんな所にいたのね。あれ、隣のおじいちゃんは誰? どこかで見たことあるような……」


 老人とルーファス王子は二人とも全身泥だらけで、特に老人は着てる服がズタズタに裂け、長いアゴヒゲに泥がこびりついている。


「カナさま、あやつが全ての元凶、クーデター犯の宰相(サイショウ)です」

「あの人、サイトウ(斉藤)さんっていうのね。そういえば長いヒゲが行方不明のおじいちゃんにそっくり、名前も確かサイトウだった!! 大変だわ、早くサイトウさんを保護しなくちゃ」

「ええ、我々で宰相を捕らえて王子を救い出すのです。私は鉄柵の外から、反対側にいる王子たちの後ろに回り込みます。その間カナさまは、相手の注意を引きつけて下さい」


 アシュは厳しい表情でそう言うと、急いで山頂を下り茂みの中に身を隠した。

 カナは作業の手を留めて、ルーファス王子と一緒にいる老人に声をかける。


「サイトウさーん、どこに行ったんですか。長い間行方不明になっていて、皆が探していましたよ」

「始祖の大魔女め、俺が逝ったと思ったか。そして生き延びた俺を探しにきたな」


 宰相は隣にいる王子を無理やり立ち上がらせ、細い首に腕を回す。

 王子にのしかかるように腕で締めあげ、息苦しさに耐えきれずルーファス王子は呻き声をあげた。

 しかしカナには、老人が王子を激しくハグしているようにしか見えない。


「いいか、始祖の大魔女。妙な真似をすれば、王子の首をへし折るぞ。今から俺の言うことを聞くんだ」

「おじいちゃん、そんなに強く抱きしめたら王子が嫌がるよ。その子はサイトウさんのお孫さんじゃありません。ハイハイ、おじいちゃんの言うことはなんでも聞きます」


 カナは老人を落ち着かせようと、声かけしながら黒い雨合羽のフードとマスクを外して自分の顔を見せた。

 茶色い柔らかな髪に黒く大きな瞳、人形のような顔立ちの小柄な娘の姿に宰相は驚く。

 王宮に飾られている始祖の大魔女の肖像画より若い。

 始祖の大魔女は、若返りの秘術を習得したようだ。

 それなら好都合、大魔女を脅して自分を若返らせるように命じよう。


「くくっ、俺の言うことをなんでも聞くと言ったな。始祖の大魔女よ、俺はお前に会いに来た。その命を奪うためにな」

「あれ、おじいちゃんは大叔母さんに会いに来たの? ごめんなさい、大叔母さんは今ここに住んでいないの。南の島でバカンス中よ」


 何故か二人の会話は激しく誤訳変換された。

 始祖の大魔女は宰相に対して、子供をなだめるような口調で話し、宰相は馬鹿にされたように思えて苛立った。


「うるさい、俺は始祖の大魔女とおしゃべりをするために、妖精森に来たんじゃない。始祖の大魔女に命ずる。俺に王位を認めろ」

「おじいちゃんったら、物忘れが酷くなって自分の名前も忘れたの? 貴方は(オオイ)大井では無いわ、サイトウさんよ」

「俺は王位は無いと言うか!! 始祖の大魔女が認めないのなら、俺は真の簒奪者として全てを滅ぼし王の座に付くまでだ」


 カナとの会話に興奮した宰相は、全身を激しく震わせる。

 変だ、どこかおかしい。

 その様子にルーファス王子は眉をひそめた。

 痩せた老人の顔のしわが一段と深くなり、そして口角がつり上がると黄色い歯をむき出し怒りに血走った目で王子を見ると、悪鬼のように笑った。


「な、なんだ、急に魔力が膨れ上がった。人間の宰相から禍々しく膨大な魔力を感じる」

「そうさ、ルーファス王子。妖精族のように魔力を持たない俺は、【魔女殺しの邪剣】を手に入れるため、体の一部を捧げた。そして【魔女殺しの邪剣】は我が身と一体となった」


 やせ細った宰相の手に握られていたのは、古びた一振りの短剣だった。

 刃先に赤黒い血がこびりつき、不気味な赤い色にルーファス王子は底知れぬ恐怖を感じる。

 そして宰相は王子に見せつけるように自らの掌を開くと、指の数が足りない。


「まさか宰相、自分の体を贄にして邪剣と同化したのか!!」


 古びた短剣はグニャリと歪むと、血が飛び散ったような毒々しいマダラ模様の毒蛇に変化した。


「人間が【魔女殺しの邪剣】を扱うには、これぐらいの犠牲が必要だ。さぁ、毒蛇に姿を変えた【魔女殺しの邪剣】よ。大魔女の喉元に食らいつけ!!」


 宰相の手を離れた毒蛇はぬかるんだ土に潜ると、張り巡らされた鉄柵の下を這いまわる。

【魔女殺しの邪剣】は土の中から一直線に、鉄柵の向こう側にいる黒衣の魔女を狙う。

 

「やめろっ、オヤカタに手を出すな。白銀の守護蛇よ、【魔女殺しの邪剣】をしとめろ!!」


 ルーファス王子も、縄を解いて掌に隠していた守護蛇を放った。

 しかし疲労困ぱいの守護蛇は、魔力の満ちた【魔女殺しの邪剣】に追いつけない。

 向こう側にいるカナは、何も知らず再び金網切断作業を始めていた。


「ふはは、大魔女を殺せ。何が呪いだ、俺はそんなものは信じないぞ」

「オヤカタぁ、逃げて。僕の声が聞こえないの、早く逃げて!!」


 王子は必死で叫ぶが、鋭い金属の摩擦音にかき消されて声はカナに届かない。

 狂ったように笑う宰相は魔力に酔い、もはや隣にいるルーファス王子の存在を忘れている。

 使い魔を操るには意識の集中が必要だ。

 宰相の関心を魔女カナから自分に向けるため、宰相に飛びかかると長いアゴヒゲを引っ張った。


「うあっ、このクソガキめ。俺のヒゲから手を放せぇ」


 アゴヒゲを力一杯引っ張られた痛みに宰相は驚き、しがみついているルーファス王子を拳で殴りつける。

 しかし王子は長いヒゲを両手に絡め、何度殴られても絶対に離さない。

 二人はもつれて鉄柵に体当たりすると、派手な音を立てて鉄柵が傾いた。

 その大きな音にカナもやっと気が付いて、作業の手を止めてルーファス王子の方を見ると、視界の隅に何かが地面を這う痕跡を見つけた。

 鉄柵の下の土がもりあがり、長い紐状のモノが大きく蛇行しながらこちらに向かってくる。

 カナは足元に落ちていたゴルフボールを拾うと、それに力一杯投げつけた。

 ゴルフボールは抜群のコントロールで、金網の目をすり抜けて狙った獲物に直撃する。

 そして土の中から現れたのは血糊のようなマダラ模様の不気味な蛇だった。


「あれ、さっきまで追いかけていた蛇と違うような……気のせいね。このカナさまから逃れようと、土の中に潜ったって無駄よ。絶対仕留めるんだから」


【魔女殺しの邪剣】は鎌首をもたげ、大きく跳躍すると獲物に飛びかかる。

 その瞬間、カナは条件反射でバールをフルスイングすると、先端が二つに分かれた釘抜き部分がマダラ蛇の頭部にヒットして地面に叩き落とした。

 だが毒蛇はすばやく起き上がると、魔女の足先、分厚い作業用ブーツに噛みつくが、金属製足先に当たって毒牙がポキリと折れた。


「ぐわぁー、口が、歯が折れるっ。まさかこの痛みは、同化した毒蛇と感覚を共有するのか?」


 突然の痛みに唖然とした宰相の顔から、血の気の色が引いた。

 魔女カナは足に噛みついた蛇を引き離そうと、胴体をスパイク付きの靴底で力一杯踏みつける。


「わたしだって蛇は怖い。でも、王子やおじいちゃんが蛇に噛まれたら大変!! みんなを守るためにも、害獣はワタシが徹底駆除をするっ」

「ぎゃあ、イタイイタイ、背骨が砕けるぅ。踏むのを止めてくれ」


 さらにカナは愛用のバール握り、容赦なく毒蛇の頭に振り下ろしトドメをさす。

 魔物と同化した宰相は頭蓋骨が砕ける激痛に襲われ、痛みに耐えきれず大きな悲鳴を上げて口から泡を吹いた。


「やっと害獣駆除できた。これで大丈夫って、いきなりサイトウさんが発作を起こして倒れた!! ルーファス王子、私も今すぐそこに行くから、おじいちゃんの様子を見て」

「……もう平気だよオヤカタ。宰相は気を失っている」

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