第18話 ケレス連邦首都サジタリウスコロニー

 暗黒のアステロイドベルト。島宇宙最大惑星ケレスから3万キロ地点。スバルから切り離されたシャトルは、マーク達を乗せ7000キロメートルまでスバルと並行航行した。そこからO3P(三人の無法者号)は、サジタリウスコロニーの玄関口、クエィザー宇宙港の侵入航路に入った。

 管制塔から暗証コードを求められて、ゴウから貰ったゲストコードをナオミが入力する。

「ゲストコード承認されました。クエィザー宇宙港、ゲストポイント772に着陸してください」

 三人は、小さく息を吐いた。

「了解しました。ガイド経路確認、侵入します」

 アランが応答して無事着陸した。着陸すると、無人のリムジンカーが迎えに来て、3人を入国審査エリアに連れて行った。ゲストは、通常の場所ではない。審査は長引くかと思ったが、ミリアがあらかじめ、ガニメデで申請していたので、思ったよりもスムーズに進んだ。


「良い旅を」

 監察官に、にっこりされてアランは、ケレスの印象を変えた。

 ナオミたちにも余裕がでる。マークのメンテナンスロボットMG2は、アクエリアスにはいないで、航海中ずっとあの、私設艦長席に座っていた。

「今頃MG2は、あそこで踏ん反り返って情報整理をしてるかもね」

 ナオミが、マークたちを笑わせる。ナオミは、ここに来るまでの10日間、自分から学習機に入ってケレスの最新情報や、様々な勉強をしていた。その学習スピードは、二人が舌を巻くほど早い。ケレスに降り立ち、後は体験するだけだ。

 アランは、家宝の光剣を持っての入国だ。アランの光剣は、柄の部分しかない。携帯することで、じっくりとは、調べられず。ゴウの言う通り、すんなり通る事が出来た。腕にしている光の盾も同様そうなった。実弾(光燐水のカプセル)は、間に合わせのものをケレスのアイテム屋で買おうと思っている。

 荷物は殆ど持たずに、到着ロビーに出た。先に到着していたゴウが迎えに来ているはずだが見当たらない。通信アイテムのメイムを鳴らしたが応答がない。三人は待つことになった。しばらくすると珍しく地味な格好をしたゴウが現れた。軍服っぽい格好だ。

「待たせたな、ちょっと頼んでいた物を取りに行ってたんだ。それよりどうだアラン。ケレスは?」

「わるくないです」

「ははは、そうだろ、ここは、お前らが思っている程ほど悪くないところだ。おまえらには、アイテム屋に行って、買い物が出来るか店主に試してもらうぞ」

 ここで認められると、ケレスに一人でも、入国できるようになる。これで、アステロイドベルトだろうが、世界中どこにでも行けるようになり、真のフリーランスを名乗れるようになる。魔法特区に行く前に、ゴウに連れられ、宇宙港のターミナルで食事をした。豪華でおいしいのにも関らわず、ビックリするほど安い。ゴウさんのおごりだと思って、マークは、ひれステーキを頼んだ。地球の2倍はあるし、とても柔らかいのには驚いた。


「ここは裕福な国さ。遺跡商売も調子いい。ただ、この収入は有限だ。切れたときが怖いかもな」

「時限爆弾ですか?」と、アラン。

「笑えないわよ」

「どのくらい期間が有ると思います?」と、マーク。

「遺跡物資が切れる相当前さ。ここは、そう思っている」

 今、見た限りでは、この国の危うさは実感できない。しかし、遺跡の発掘スピードが、金星やフォンファンに比べて早すぎるのは、気がかりだ。

 ナオミは、ここに来るまでにケレスの猛勉強をしたが、総督の性格をつかみきれないでいた。

「ケエル総督は、どんな人ですか」

「いい人だぞ」

「会った事あるんですか」

「まあな、喰い終わったか。アイテム屋に行く前に会わせたい人がいるんだ、行くぞ」

 さっきまで、ケレスから見れば不穏当な話しをしていたのに、ゴウは、誰に会うのか言ってくれない。「行けばわかる」と、言う。誰に会いに行くのか、ついて行くしかない3人だった。

 ゴウは、宇宙港から反重力リムジンカーに乗って、魔法特区を目指した。魔法特区は、サジタリウスコロニーの中心区画に有り独立したドームの中にある。入り口に入ると、ちょっと青っぽい光に包まれた。

「アイソトープの光だ。調整しても、色温度が上がるんだと」風の遺跡のものだ。「ジョンのは、赤いのに不思議だよな」

 リムジンカーは、特区に入るとスピードが落ちた。中心街近くまできたら、停車場になっていて、お疲れ様でしたと、降ろされた。後は、歩くらしい。

 真直ぐな中央通りは、そのまま中心の神殿のようなところに続いている。この大通りに、人が大勢出ている。この歩行者天国には、サジタリウス産のパイロットスーツや、遺跡アイテムまで売っている。マークは、パイロットスーツの値段が気になった。


「おいマークなにしてる。ここが、オレ達が行く “ミレニアムホース”(アイテム屋)だぞ」

 その店は、どこの店より立派で、落ち着いた建て構えをしていた。マークは、玄関の柱に触ってみた。

「これ、木ですよね」

「木ぐらいあるだろう」

「サジタリウスコロニーの歴史は200年よ。火星から独立宣言して50年足らずだけど、ケレス入植は180年前、植林も、120年前から始まっているわ。収穫期に入る木は、多いはずよ」

 そう言いながらナオミも木に触る。入り口の上には、羽のある千年馬が、羽ばたいている。3人は、店内が気になった。

「行くぞー」

 全員、慌ててゴウについていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る