あんたへ
玉浦 ほっかいろ
可愛い元カノへ
君はすぐにバレる嘘をつくよね。
バレたって構わない、そのあとが面白いんだ、って言わんばかりの嘘を。それに騙されて尻尾を振っていた僕が悪いのかな。
いろんな場所へ二人で行ったね。
二人が好きなミュージシャンのライブへ、光り輝くイルミネーションの庭へ、広くて寂しい河原へ、アロマの香るラブホテルへ、僕の秘密基地へ、海へ。まだあるけど、君はきっと興味がないんだろう。ていうか既に忘れているかな。僕はいつでも、瞼の裏に鮮明に映し出せるのに。
連絡をくれたのは君だったし、イルミネーションを見に行こう、と誘ったのも君だったよね。
僕が答えると、君は電話越しに、嬉しそうに笑っていたよね。
それなのにいざ約束した日になると、君は嘘みたいな理由でいなくなったよね。僕が隠していた期待をあっさりぶち壊して。
それでもTwitterの上では薄っぺらいポエムを呟いていたね。「好きに理由はないんだよ」だって。
もしかしたら君は電話越しに僕を嘲笑ってたのかな。尻尾を振る僕を、僕の知らない誰かと笑いものにしていたのかな。君は誰からも愛される、可愛い皮を被っていたから。
約束した日付がクリスマスイヴだったのは偶然じゃなかったのかな。誰かと夜を過ごしながら、僕を玩具に遊んだのかな。
君の、甲高くて、少し掠れている君の声を思い出すと、吐き気がするようになった。僕の目の前に君が現れれば、殴りつけてやれるのに。イヤリングを、耳ごと引きちぎってやりたい。ガラス玉のような瞳を抉ってやりたい。ウサギのような小さな鼻をへし折ってやりたい。薄汚れたあれにに傘を突き刺したい。君の嫌がることを、痛がることを全てぶちまけたい。
一番嫌なのは、僕がまだ期待を捨てていないことだ。いつか君が泣きながら、僕に電話をかけてくれると密かに思い描いていることだ。いっそ君が僕との関係を、ひとつ残らず断ってくれればいい。僕からはできない。
別に悲しくなんかないよ、と言えば嘘だし、負け惜しみにしかならないのが悔しい。何もかも君のせいにして、殻を破って生きていける能天気な心が欲しい。
出会わなければよかった。
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