第14話 たまには話でも

 吸血鬼ブルーが起こした青月事件が終わった頃、了は菫と一緒に人里にある甘味処で団子を食べていた。


「で、青月事件は私が解決したわけ」


 了は身振り手振りしながら事件の顛末を説明した。


「ほーん、吸血鬼ねえ。本当にいるもんだな」

「菫、お前なんで事件解決に行かなかったの?」

「めんどうだったからな、月が青くなるだけで大騒ぎしすぎなんだよ、人里の奴ら」


 菫の言葉に了はあきれた。


「菫それでも、管理所の事件解決者かよ」

「別に好きでなったわけじゃねーよ」


 それを聞き少し驚く了。


「え、違うの?」


「ああ、わけあってな」


「わけ…じゃあ昔なにしてたんだ」


「個人記者やっていた。この世界の謎を調べたり、な」


「何か以外…その調べていた世界の謎って一体何なんだ」


「それはだなあ、この世界に何故、捨てられたモノ不要となったモノなどが集まるのか、ここに来る条件はあるのかだとか。…先導師アカネについてだとかな」


「そうか、なぜ辞めたんだ」


「わけあって言ったろ。まあ大災害でな、色々あってな辞めた」


「家族が死んだとかか…」


「それもあるが…知ってしまったんだよ」


「何を…」


「知らない方が良いこと」



 菫は店員を呼び、お茶を持ってこさせた。そして空を見ながら飲んだ。


「ここのお茶は美味いなあ」


「なあ知らない方が良いって何のことさ?」


「お前幸せか…」


「?、今は幸せだけど」


「なら知らない方が良い。知ったら辛い」


「辛い?」


「…お前そういえば大災害の後にこの世界に来たんだよな」


「ああ…」


「…」


 菫は少し沈黙した。了はこんな菫を見るの珍しいと感じた。


「???」


「…言おうと思ったけど止めた」


「なんじゃそりゃ」


「代わりに他の事なら教えてやるよ。お茶が美味くて気分が良いからな」


「うーんじゃあ…お前の性格ってどうしてそうなの」


 了の言葉にお茶を噴き出す菫。


「性格かよ…昔からこうさ、生まれつき」


「本当かー、さっきの言えないわけと関係しているんじゃないか」


「…してないねー」


「嘘くさいねえ」


「ほかの質問にしろ」


「わかったよ。じゃああれだ。騒ぎを起こした奴に必要以上の罰を与えるのはなぜだ?。見てて気分悪いぞ」

「この世界は犠牲の上で成り立っている。なのに面倒なこと起こす奴はおもいっきりやった方が良い。」

「…もしかしてその考えもワケあり?」

「ああ」

「よくイライラしてるのも?」

「ああ、何も知らずに生きてる奴や死んだ方が良いやつに対してな」


 菫は小声で自分に対してもだけどと付け足した。了には聞こえなかった。


「なら、ワケを周りに教えたらいいじゃん」 


「…教えてもどうしようもない。不要な混乱が起きる。辛いことが起きる」


「…わけわからんな」


「誰にだって秘密ぐらいはあるさ、了にもあるだろ?」


「…」


「…今日は無駄に話し疲れた帰るわ。じゃな聞きたがりのうぜー了」


「最後のはいらねーだろ。菫!」


「そうかい、そうかい」


 菫はへらへら笑いながら甘味処を後にした。了はもやもやした気持ちになり、気分を変えるためこの日団子をたくさん食べた。そのおかげで腹と生活が少し苦しくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る