第10話 日常の疑問

 ―――呉服屋

 葉月はここで働いていた。服の整理をしているところに声をかけられ、相手をする。声をかけたのは菫だった。葉月には菫はどこか苦手な相手だった。けしてザクロ関係では無いと葉月は思うことにした。


「よう、葉月」


「何の様だ、菫」


「まあ、少し話をしたくな」


 菫はへらへら笑っている。葉月は手を止めずに話を聞く。


「葉月はなんで封魔に入ったんだ」


「聞いてもつまらんぞ…妖怪に家族を殺されたからだ」


「ふーん。それは先導師が現れてた時期か」


「そうだ。だからなにさ」


「別に、それと管理所の危険な仕事を何で手伝っていんのかなて、気になってね」


「それは、妖怪は危険な存在で事件の裏で関わっているかもしれない、だから手伝うのさ。もしそうなら見過ごすわけにいかない。もし妖怪関係で困っていたら頼ってもいいぞ」


「考えとくわ、妖怪恨んでる?」


「ああ…」


「ほーん、おまえいつまで恨むの?」


「それは…いつまでもだ」


「そうか…苦しい人生だな」


 菫はどこか悲しげに笑う。普段と違う菫に、葉月は困惑した。


「何が言いたいんだ」


「いや別に。お前を憐れんでいるのさ、悲しい現実にいる、お前をな」


「…?家族がいないことか?」


「まあそうであり、全てでは無い」


「わけわからんぞ…」


「ま、気にするな。お前幸せか?」


「?まあ、何とも言えんが生きているからそうなんじゃないか」


「じゃあいいか」


「何が」


「知らない方が良いのさ。幸せなら」


「何を?」


 菫は疑問に答えず店から出て行った。葉月は菫の言葉にどこか引っかかりながらも、話したことは大したことない世間話だと思うことにした。


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