竜と共に

小鳩

第1話 はじまり

その日、立ち見を含めた観客はどのくらいだったのだろうか

何人でもいい。

とにかく見物客側として最高で、出演者として最悪だった。

これまでしてきた悪事を公表するような、そんな気分。

思い当たることは沢山あった。

そうだ、あそこの村の人はどうなったのだろうかだとか、あの森は再生へ向かっているのだろうか

そんなことばかりがぐるぐると思考を支配していた。

会場の歓声が頭に響く。

手足の切断面に響く。

「こーろーせ!こーろーせ!」「やっちまえー!」「立てよ!!楽しませろ!!」

上から声が降り注ぎ、僕ら出演者を覆い、更に外へ外へと響いた

「なんで…僕は…」

罪のない生き物。

〝人〟を殺さなくちゃならないんだ

これに出演するのは竜騎士の娯楽だと僕らの先輩は言った。

何が娯楽だ。

これは人としてあってはいけない行為そのもで、僕には心を捨てなければできなかった

だんだん自分が壊れていくのがわかった。

だからこれを最後に逃げ出そうと彼と決めていた。

きっと彼女はもっと早くこの娯楽に嫌気が指して僕の元を去ったんだ。

彼女には勇気があった。


そう、これで最後。

逃げ出すならこの見世物のお祭りムードの今日しかない。

僕の身体の芯が熱くなり、彼の腹の底から熱が押し上げられるのを感じた。

目を伏せる寸前、青の混じった熱が放たれた

あたりには同じような焦げあとと、飛び散った灰が残り、この時間に多くの命を奪った僕は自身を責めなければならなかった

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