第30話 ハーフブレイク

 島野君は話し終えると、

「俺の知ってるあの日はこんなもんだよ。笑いたきゃ笑えよ。それに安居さんの言っていた戎谷ってのが、兄の方じゃなく弟のお前の方だったと知ったときは驚きよりも呆れたというかなんというかな……普通、勘違いするよな?」

 と、有悟君に対して毒づく。私は島野君に対して、ムッとする。

「まあ、島野の八つ当たりというか、あれなのは戎谷君も気を悪くしないで流してあげて」

 沙苗が横からフォローをする。それに対して島野君が顔をしかめる。有悟君は何を言われてもどこ吹く風というように眉一つ動かさない。

「島野の話はあれで全部というわけじゃなくてね、私の話をするとさっきの続きみたいにになっちゃうんだ」

「どういうこと?」

「おっ、食いついたねえ。焦らない、焦らない。ちゃんと話すから。いいよね、島野?」

「吉川がいいなら……」

 島野君は歯切れが悪い返事をして、飲み物を一気に飲み干す。理由は分からないが沙苗には逆らえないようで――。沙苗は島野君の隣で楽しそうな表情を浮かべている。

「それじゃあ、私もあの日のことを話すね――」

 沙苗は島野君とは違って、軽い口調で話し始める。

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