茜色の世界に君に会いに行く
たれねこ
Day 1
第1話 プロローグ
夢を――不思議な夢を見ていた気がする――――。
私は
上手く言葉が出てこない、息ができない、そんな苦しさに感覚が支配されつつも
目を覚ますと、茜色の世界ではなく、カーテンから差し込む白い太陽の光に照らされた見慣れた自分の部屋の天井が目に入ってきた。
先週から十月に入り、季節は秋真っ盛り。一ヵ月後には
ふいに首筋の違和感をぬぐおうと横になったまま左手を挙げようとする。しかし、
でも、それはありえないことだった。私は家に帰ると二階の自分の部屋に真っ直ぐに行き、制服のブレザーとリボン、スカートをハンガーに掛け、楽な部屋着に着替えてから何かをしている。それは習慣化していて、どんなに疲れていても制服のままベッドに横になるなんてことはしない。
ただ、制服一式をハンガーに掛けた後、シャツだけというなんとも無防備な姿でベッドに倒れこむことがあるのは否定しない。
だからこそ、今の制服姿というのがどうにも
頭の中に疑問符が浮かびまくっている
私は今まさに着ているブレザーのボタンをチェックする。前を
私はそれを確認してひとまずホッとする。ボタンは大きさ的に袖のボタンのようで、もしかしたら、誰かのボタンを知らず知らずのうちに預かったり拾ったのかもしれないと思い、ブレザーの右ポケットにボタンをしまうことにした。
一つ大きな伸びをしていると、外から小学生が笑い声をあげながら登校している音が聞こえてくる。その声にハッとして目覚まし時計を見ると、いつもは私も家を出ている頃合の時間を示していて――。
「なんで、今日に限って、スマホのアラームも目覚ましも鳴らないのよ! 母さんも起こしてくれればいいのにっ! もう!!」
私は制服を着ていたことを幸運だと
家の中はとても静かだった。居間のソファーでは母が横になって眠っていた。
「
寝息に混じり、私を名前を呼ぶ声が聞こえる。私は母の寝顔を
私は両親には苦労をかけているという実感がある。ただ両親はそのことで私を責めるどころか応援してくれている。私の家は子供の私から見ても裕福というわけではなかった。父は朝早くから深夜まで仕事で家を空け、休日も出勤したりと年中忙しそうだった。母も家計を下支えするために近くの弁当屋でパートをしている。
そこにさらに私が追い討ちをかけた。私立の名門進学校に合格し、高い学費に通学のためのバスの定期代、勉強についていくための予備校にと、我が家の経済状況を
私はそんな両親の期待と努力に応えるために一生懸命だった。
「お母さん、いつもありがとう。いってきます」
起こさないように小声で母に挨拶をして、いつものように玄関から外に出た。
バス停まで歩いて、列の最後尾に並び、バスに乗り込む。吊り革をいつものように右手で掴み、流れる景色をぼんやりと眺める。窓に映る自分の姿を見ながら空いてる左手で前髪を整える。そこで私の視線は私の左手首で固定される。腕を挙げたことで
それにしても今日は不思議なことだらけだ――――。
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