第41話 けじめ
昼を食べながら、美星とロザリーは話しあっていた。
「鉄は大丈夫ナノ?」
ロザリーは美星へ不機嫌そうに聞いく。
「ここしばらくは安静にしといたほううがいいな。何せ心の傷だから」
美星も目付きが悪い。しかし、声は冷静だった。
「お珠が護衛についてる。大丈夫だろ」
「タマ一人?」
「鉄さんがいねぇんだ。パーカーのじい様の護衛に着けるのはあんたしかいねぇんだ」
言葉が通じるのは、ロザリーだけだ。
美星が呟く。
「解ったワ パーカーさんは任せテ」
「ああ、頼むぜ」
お互いに利害が一致している。
パーカーと鉄之助を守ること。そして、
「……見廻り組の武居久……覚悟しろ……ぶっ殺してやるからな」
「ケツ穴をもう一個増やして、頭にもぶちこんでやるワ」
「もしも出先で出くわしたら、すれ違いざまに脳天にぶちこんでやれ。早い者勝ちだ。お珠にもそういってある」
「understand」
京都見回り組の武居久にけじめをつけさせる。その点においては二人の意見は合致していた。
2
お玉と鉄之助は東春のところに向かっていた。
「鉄さん。辛くないかい?」
「大丈夫ですよ。検診なんかいかなくても」
「いいや。襲われたんだ。医者に見て貰うのがいい。それと、もしそのアマを見つけたら必ずぶっ殺してやるからね。安心しとくれ」
右手は袖口にはなく、胸元のSSAを常に握っていたし声は低く、臨戦態勢にあることが分かる。
「そんなことしないでいいですよ」
「いいや。これだけは譲れないよ。男は大事に扱うって一番大切なことがわかってねぇ。そんなアホは、この世には要らねぇ」
東春のところに向かいながら、女と何度もすれ違う。そのたび鉄之助はキョロキョロしていた。
「こええのは判る。でもキョロキョロしてたら、相手が自分に気があるんだと勘違いするよ」
「すいません」
「まぁ、男はそれくらい警戒してくれて普通さ。やっと鉄さんが常識をわかってくれて助かる」
常識がない。そういわれて鉄之助はきづついた。
「男は女に守られる。女は甲斐性の見せ時で、張り合いがでる。お互いに補っていきていくのが一番うまくいくンさ」
「東春先生こんにちは」
「まいど。今日はどうしなすったん?」
「鉄さんが手込めにされた。相手は、京都見廻り組の武居って女だ」
「……そら災難なことや。二階で待っとくれやす」
東春はそれ以上はなにも言わなかった。
しばらくすると
「失礼いたしますえ」
襖を開けて東春が入ってきた。
東春は居ずまいをただして鉄之助に言う。
「これから言うことは、診断の為に聞くことや。せやから、辛かったら頷くだけでええ」
「大丈夫です。お願いします」
東春の診察がはじまる。しばらくしてから声がかかる
「おおきに。答えてくれて助かったわ」
(肌を見られた、胸も触られ、睾丸を握られ、潰すと脅された……か。酷いな。並みの男なら、外に出られんようになる)
東春は再度居ずまいをただした。
「ようねれるように、薬を出すさかい。寝れんときは飲むこと」
「はい」
「それと、気を強くもってな。あんたの敵は幕臣や。私もなにかつかんだら文を出す」
「東春先生はそんなことしなくても」
「なに言うてんの? 医者の敵は病人を増やす奴や。その女はうちの敵ですよって」
東春は静かに笑って見せた。
3
「グラバーの銃を調べた結果、ライフリングはありませんでした。銃身も錬成が甘かった。そのせいで、集弾率は10発のうち4発は大きくそれています」
龍女から買った、グラバー商会製の銃を分解し調査したロザリィからの解析結果を読み上げた。
フフンとロザリィがソファーに自慢気な顔で座っている。
「次は、うちの製品との比較です」
結果としては、集弾率、飛距離、耐久度においてロザリィの改良型が上回った。値段においては、グラバー商会のの方が安い。
各潘がどれだけ購入したのかはまだ調査中である。
「効果があると思われるのは二つ。ひとつは関東へと戻り幕府に売る道。もうひとつはグラバーのマーケットを食い散らかす道です」
「京都での当初の目的は橋頭堡を確保する事でした。雪代屋ができたことで目的は達成したと言えます」
鉄之助はそこで息を吸い直した。
「関東に行った場合は水戸の天狗党に売り着けます」
「水戸天狗党か……そのあとは会津かい?」
美星が聞く。
「まぁ、そうですね。天狗党が無理そうなら会津、米沢、加賀、越前辺りもありかと思いますがどうしますか?」
4
「どっちの案も売上は増える。どっちも需要はあるんだ。だが鉄さんの身の危険を考えると、京都はあぶねぇ」
とお珠が言う。
「かといって、攘夷で頭が固くなった水戸は、もっとあぶねぇ」
と美星が言う。
「会津、米沢、加賀藩ニスル?」
ロザリーが聞く。
「うーん。難しい……」
「一旦ブレイクだ。考えをまとめて三日後、意見を出し会う」
最後はパーカーが場を閉めることになった。
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